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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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ターディグラダ・ガール 第六話「CCS再び……」 一章


 ここは丘福市南区宮鷹にある、洋風の長い塀に囲まれた敷地内。その敷地は公立の小学校ほどの面積があり、そこには欧州風のガーデンとも呼べるような庭地。明治や大正を思わせるような古い佇まいでありながら、高級感溢れる洋風の館が建っていた。
 そして正門や館の玄関口には、『水無月(みなづき)特殊医療診療所』と刻まれた、ガラスアクリル材とステンレスを組み合わせた、今風のデザイン看板が貼りつけられている。
 駐車場には数台の乗用車が停めてあるが、その中の一台……国産の黒いセダン。実はこの車、警察の特殊車両つまり覆面パトカーと呼ばれているものである。
 これに乗って来たのは、未確認生物対策係の係長である和滝也。そして同係の特殊強化機動隊員、橘明日香の二人であった。
 玄関で受付を済ませ、診療所内を巡る和と明日香。
「ホント、凄く高級感のある建物ですよね。とても、病院とは思えない……」
 所内を歩きながら、アチコチを見渡し深いため息をつく明日香。
 ちなみに一つ『うんちく』だが、病院と診療所の違いはどこだがご存知だろうか?
 それは入院施設があるか…ないか。あった場合、ベット数が20床以上を病院。19床以下を診療所と呼ぶ。
 付け加えるならば、『クリニック』『医院』などは、基本的には診療所に分類される。
 話を戻すと、さきほど明日香は『病院』と呼んでいたが、したがってここに至っては、それは正確ではないという事になる。
「元々ここは診療所ではなく、Mermaid Sea Companyの創設者である水無月家の、お屋敷の一つだったらしい。」
「えぇ~~っ!? 個人の家だったんですか!? どうりで病院らしくないなぁ~と。あ…! でも、個人宅にしても立派過ぎますよね~っ!」
 どちらかと言えば体育会系に近い性格の明日香だが、やはり一人の女性。格式の高い物件を目の前にすると、少々テンションが上がるようだ。
 そんな日常の生活とは違った雰囲気の中、
「和様……橘様、大変お待たせいたしました。」
 そう言って現れた一人の女性。
「こちらこそ、お招き頂き感謝しております。紫崎さん」
 和のその返答から解るように、二人の前に現れたのは、Mermaid Sea Companyの社員である……紫崎芽衣(メイ)。それは先週、県警本部に未確認生物による体形異常変化などの被害を被った人たちへの、救助活動を申し込んできた人物である。
 あの日、茶和麗華が作ったメカによって、複数の警官や一般人。そして和の部下である、藤本未希、西東瀾、中田素子の三名が、オニギリなどの異常な姿に変化させられてしまった。
 その者たちは、ここ特殊医療診療所に搬送され、入院しているのだ。
 あの日から、容態が落ち着くまでという理由で面会すら許されていなかったが、本日やっと面会など状況確認が許され、こうして足を運んだという訳である。
「ではまず、藤本さんたちのお部屋から案内いたします。」
 そう言ってメイ(芽衣)は、先頭になって病室へと進み始めた。
 未希や瀾、素子の無事な姿を確認し、その他の病室も一通り回り終えると、
「そうそう当診療所長が、お二人方と話をしたいと申しておりましたが、まだ……お時間は宜しいでしょうか?」
 メイは、そう二人に申し入れしてきた。
「もちろん、ありがたいことです。こちらとしても、ぜひ!」
 和の返答にメイはにこやかに微笑むと、
「では、所長室へご案内いたします。」

 案内された所長室は、16~8畳ほどの洋室で、向かいの窓際に所長用のデスク。部屋の中央に応接セットが置かれている。
 二人が入室すると、それに気づいたように、デスクに腰掛けていた白衣の若い女性が立ち上がり、
「お忙しい中、ようこそお出でいただきました。どうぞ、そちらへお掛け下さい。」
 と、応接セットへ手を向けた。
 見ると、その応接セットのソファには、もう一人……更に若い女性、いや…少女が腰掛けている。
「では、失礼いたします。」
 言葉に甘え、少女の向かい側に座る和と明日香。
 二人が着席するのを確認すると、少女の隣に腰掛ける白衣の女性。
「どうされます? お嬢様がお話をされますか?」 
 白衣の女性は隣にいる少女に、そう問い掛けた。
「いえ……、私は喋るの得意じゃないからぁ、ミリアさん……お願いしますぅ。」
 お嬢様と呼ばれた少女は恥ずかしそうに首を振り、慌ててそう返した。
「わかりました。」
 白衣の女性はそうニッコリ微笑むと、再び和たちを見つめ直す。
「はじめまして。私は当診療所の所長を勤めている、清水美里亜(きよみずみりあ)と申します。」
 ミリアと名乗る白衣の若い女性は、柔らかな笑みを浮かべたまま、そう言って二人に会釈をした。
「そして私の隣にいるのは、当診療所の『オーナー』であり、水無月家の御令嬢である……聖魚(セイナ)お嬢様です。」
「は、はじめましてぇーっ! わ、私ぃ…水無月聖魚といいます……。」

TG-06_01.jpg

 よほど恥ずかしがり屋なのか? セイナという名の青い髪の少女は、慌てふためきながら、挨拶をした。
「み、水無月家の御令嬢……で、この診療所のオーナー!?」
「お、お嬢……様~っ!? わ、私…なんかと違って、す…凄く気品がある!!」
 よほど驚いたのであろう。知らず知らずに和も明日香も、それぞれの素が露わになってしまっていた。
「あわわ……っ! あまり意識しないで下さい……っ。私……オーナーって言っても、何もできない…ただの女子高生ですからぁ~。」
 こっちはこっちで、相変わらず慌てふためいている。
「お嬢様は日頃、超が付くほどのノンビリ屋のマイペースですが、今日は警察の方がお相手という事で、相当緊張なされているようです。」
 ミリアは、やや苦笑しながら、そうセイナをフォローした。

「それにしても、先程病室を覗かせて頂きましたが、僕の部下も……他の警察官たちも、殆ど元の身体に戻っておりました。あんな…オニギリやら風船やら、常識では考えられない状態だったのに、こんな短期間で! とても素晴らしい医療技術です。心より感謝しております!」
 和はそう言うとその場に立ち上がり、そのまま深々と頭を下げた。
「いえ、そんな畏まらないで下さい。それが私達の能力であり、役目なのですから。」
 ミリアは、相変わらず柔らかい笑顔でそう返す。すると、
「でも、本当に凄いですよね! まるで……『魔法』みたいです!」
 明日香も、上がったテンションを抑えきれないかのように、前のめりになって付け加えてきた。
 それに対してミリアは、更にニッコリと微笑むと……
「はい、『魔法』ですから!」
「あ、やっぱりそうですか~っ!!」
 あっさりしたミリアの返答に、明日香は彼女を上回る満面の笑みで、そう受け止めた。が、
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 なんとも言えない『間』が、しばらく空間を支配し、
「えぇぇぇぇっ!! ま、魔法……っ!? いえいえ、冗談でしょーぉ!?」
 と、先程とは打って変わって、まるで天地がひっくり返ったかのように騒ぎ出した。
「た、たしかに……現代医療にしては、奇跡とも言えるほどの回復ですが…。でも、いくらなんでも…魔法だなんて……?」
 さすがの和も、ちょっと引いたように苦笑している。
 そんな和を見つめ何を思ったのか? ミリアはスッ…と立ち上がると、白衣の胸ポケットに刺していたペンを抜き取り、そのまま和の腕に突き刺した!
「な、なにをするんだぁ!!」
 慌てて立ち上がり、身構える和。
「だ、大丈夫です……、落ち着いてください……。」
 セイナはそんな和の傍に立ち寄り、傷ついたその腕に自身の掌を当てると、
「ヒーリング!」と呟いた。
 するとセイナの掌が水色に光り輝き、見る見るうちに腕の傷が消えていく。
「か、係長の腕の傷が……、な…治った……?」
 驚く明日香の問いに答えるように、
「これが私たちの能力、『治癒魔法』です。」
 そう、ミリアが返した。
「ま……魔法? 本当に……?」
 明日香は、まだ信じられないかのように、茫然としている。
「はい。先日……橘様が『茶和麗華』から受けた攻撃。あれも魔法による攻撃です。」
 そう言って、打って変わったように微笑の消えたミリアの表情。
「な、なぜ……その時の事を……?」
「私たちの情報網は、警察にも引けは取りません。
 それはさて置き、警察の方々が未確認生物と呼んでいる、数々の亜人間や邪精……怪物たち。魔法と同じように、信じられないことばかりではありませんか?」
「た、たしかに仰る通りですが、あなた方はそれらについて、何か心当たり……でも?」
 ミリアの問いに、質問で返す和。
 それに答え直すように、ミリアは「はい」と口を開くと、
「今日、お二人とお話する時間を設けさせて頂いたのは、お二人が、あの茶和麗華と戦っておられますから。だから私たちの正体と、これまでの経緯をお話しようと思ったからです。」
 ミリアはそう答え、セイナに視線を移す。すると、それに順ずるかのようにセイナは……
「わ、私と…ミリアさんは……『人魚族』という、人間とは違う…別の種族です!! そして……警察よりももっと前から、茶和麗華……いえ、彼女を従えていた、闇の錬金術師と戦っていました……!」
 これ以上にない力み様で話を始めた。
 それは闇の錬金術師の野望から始まって、その結末。更に、昨年起きた丘福大災害の真相である、精霊の支配者の降臨。数々の精霊や邪精の召喚。それによって起きた、災害の数々。
 そして、新たな力を得た……茶和麗華、パーピーヤスの野望。
 どれを聞いても、和や明日香にとって、現実とは思えない…まるで小説や映画のような話であった。
「水無月家のお嬢様と……所長さんが、に…人魚……?」
「丘福大災害の話は、以前にも藤本君から聞いたことがあったが、改めて聞いても…とても信じられない。だ、だが……たしかにこれまでの不可解な現象については、そのほうが納得がいく。」
 和は、玉のように浮かんだ汗を拭いながら、まるで自分自身に言い聞かせるように、そう呟いた。
「これまで私たちは、陰ながら救援活動を行っておりました。しかし茶和麗華が表立って動き始めた今となっては、もはや私たちも表に出るしかないと。そこで今回、あなた方…警察に、救援活動の申請をさせて頂いたというわけです。」
 ミリアはそう言うと、和に対して深々と頭を下げた。
「わかりました。これだけの能力(ちから)を持った…あなた方が味方についてくれると、僕たちとしても心強い。この件に関しては僕に一任されていますので、ありがたく受けさせていただきます。ただ……」
「ただ……?」
「それでもあなた方は一般人です。したがって交戦時などにおいては、一般人を巻き込むわけにはいきません。ですので、僕の指示があるまでは、現場への立ち入りは遠慮してください!」
 強く、厳しい口調の和。それは恰好付けではなく、警察官という立場から来る、絶対に譲れない一線であった。
「わかりました。どちらにしろ、戦闘力の無い私たち人魚族では、足手纏いにしかなりません。それに……」
「それに……?」
「私たちの魔力も、これから先……どれだけ通用するか? わからなくなってきているのです。」
 ミリアとセイナはそう言うと、力なく項垂れた仕草を見せた。
「どういうことです?」
「魔族の魂を取り込んだ茶和麗華の力は日々…増強していっており、彼女が作るロボットの変化能力などにしても、その影響もあってか……以前よりも遥かに強力になってきています。」
「そ、それって……、被害者の人たちが、お嬢様たちの治癒魔法でも治せなくなる? って事でしょうか!?」
 驚く明日香の問いに、セイナは
「お嬢様とか言わず……、普通にセイナって呼んでくれでいいですぅ。」と照れながらそう言い、更に
「仰られた通り、私たちの力だけではいずれ歯が立たなくなる可能性もある。……という事ですぅ。」と、付け加えた。
 それを聞いた明日香。しばらく黙って考え込んでいたが、フトッ……空を見上げるように、面を上げると、
「わかりました! 要は一人も犠牲者をつくらないように、私たち警察が頑張ればいいだけの事です!!」
 そう、叫ぶように言い放った。そして、そのまま和の方へ振り向くと……
「ですよね!? 係長っ!!」と、問い掛けた。
「その通りだ、明日香くん。」
 和は明日香の問いに、軽く微笑ながら返す。
 そんな二人を目のあたりにした、セイナとミリア。彼女たちも、まるで釣られるように微笑んだ。
「ところで……最後に一つだけ質問なんですが」
 場が落ち着いたところで、再び和が切り出した。
「先程の話で登場していた……『光の天女』と呼ばれる少女。一度、彼女とお会いしたいと思うのですが、連絡先を教えていただけないでしょうか?」
 和の、その問いを聞いたセイナ。
 すると、彼女の顔は再び曇りだし、ボソボソと呟くように…こう答えた。

「ミオちゃん(光の天女)は、もう……いないんです。」



 その頃、神田川県警本部地下にある未確認生物対策係、通称CCSの対策室では、瑞鳥川弘子が自身のデスクに向かって、「う~ん……う~ん……」唸っていた。
 そこへ扉の施錠を開けて中に入ってきたのは、佐々木部長と和係長とのパイプライン的役割をもった、警備課課長……石倉。
 和たちが不在の時は、こうして留守も預かっているわけだが、さすがに「うん…うん…」唸っている瑞鳥川が気になったのか、
「どうかしました? 瑞鳥川さん」と声を掛けた。
 そんな問いかけを待っていたわけではないだろうが、声に対して振り返った瑞鳥川のその表情は、眼にいっぱいの涙を溜めて、悔しそうでいて……それでいて悲しそうで。何とも言えない表情である。
「ま、マジで……どうしたんです?」
 その表情を見た石倉は、改めて瑞鳥川に問い直した。
「石倉さぁ~ん、聞いてくれるかい~?」
 その言葉遣いは、普段の強気でおどけた瑞鳥川とは思えないほどの、悲壮感に溢れたものだ。
「この間、橘ちゃんと戦った……『ボンベーガール』って奴を拘束したじゃん?」
「ボンベー……? あ、ああっ!? あの…TG01と互角の戦闘力を持っていたという、アレか!? たしか、中身は15歳の少女だったらしいですね?」
「そう……。その…アレ! でさ、その少女。すぐに病院へ搬送され、検査されたんだけど。橘ちゃんにヤラれた時に受けた軽い脳しんとう以外は、激しい筋肉疲労で全治二週間だったらしいの。」
「全治二週間か……。それでも、無事助かって良かったじゃないですか。」
 石倉のその言葉を聞くと、瑞鳥川は…バンッ!!とデスクの天板を叩き、
「違~う! そういう事が言いたいんじゃなくて、あの子は強化服を着て15分も戦ったんだよ。橘ちゃん以外の人間がそんな事をすれば、筋肉疲労どころではなく、筋肉がズタズタに断裂…!! 下手すれば、一生起き上がれない身体になってしまう!」
 と、興奮気味に喚き散らした。
「そ、そうなんですか……? そうすると、その少女は橘巡査に負けない程の筋肉を持っている?」
「そうじゃ……ない。その原因は、別の所にあったんだ……。く、くそぉ~っ……、アタシの惨敗だ……。」
 瑞鳥川はそう言って、再び頭を抱えだす。
「だから、どうしたんです?」
 また、スタートに戻るのか?と言わんばかりに、石倉が問い返す。
「ボンベーガールという強化服を解析してみたんだ。」
「はい?」
「やっぱ、茶和麗華は超が付く天才だよ。アタシなんかが、足元に及ばないほどの……」
 あの自信の固まりのような瑞鳥川が、目を潤ませて自身の敗北を認める事を言い出した。
「最新の防弾生地を使っている分…防御力はこっちの方が上だけど、肝心の運動能力増強システムは、電気刺激による筋力活性という事で、そこは殆ど一緒だった。」
「へぇ~っ、そうなんですか~?」
 と相槌を打つ石倉だが、内心は……「なるほど、さっぱりわからん!」。
「問題は、そこからだ! 奴の強化服の生地は二層構造になっていて、内部に特殊シリコンによる……超薄型の人工筋肉が備え付けられていた。」
「人工……筋肉?」
「その人工筋肉が能力増強の50%近くをアシストしていたため、装着者本人の筋力負担も半分ほどになる。だから……あの少女も、あの程度の損傷で済んでいるんだ!」
「結局、どういうことなんです?」
 石倉のその問いは、この場においては……火に油。
 瑞鳥川はグイッ!と、石倉の胸ぐらを掴むと、
「結局……強化服としての基本構造は、茶和麗華が作ったヤツの方が、遥かに優れもんだった!!…って事だぁ!!」
 と、寺の鐘の音より大きな声で、怒鳴りまくった!
「しかもヤツは、それを……たった二週間で作ったんだぞ。アタシが……4~5年掛かった物を……」
 そこまで言うと、瑞鳥川は再びデスクに顔を伏せ、頭を抱え……ブツブツと呟き始めた。
 それを見た石倉は、前回の戦闘による……ターディグラダ・ガールの敗北。藤本、西東、中田の形状変化負傷。そして、この瑞鳥川の様子。
 改めて、CCSの惨敗を実感した。

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ターディグラダ・ガール 第六話「CCS再び……」 二章

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ターディグラダ・ガール 第六話「CCS再び……」 三章

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ターディグラダ・ガール 第六話「CCS再び……」 四章

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ターディグラダ・ガール 第六話「CCS再び……」 五章


「よし、これで送信機の回線変更ができましたわ!」
 明日香が救出され治療されている間、ミンスーはレイカから教わっていた命令送信機の回線変更を、終えたところであった。
「ハイパーオーク、じゃれ合っている場合ではありませんわ! すぐに人間の警察官を倒しなさい!」
 互いに掴み合い、噛みつき合っていた二体のオーク。どちらも大小のダメージを負ってはいるが、それすら物ともしない顔で、治療中の明日香たちに向かって駆け出した。
「和係長! オークのコントロールが敵の手に戻りました。奴等が襲ってきます!」
 パソコンを操りながら、申し訳なさそうに未希が叫ぶ。
「そうか、ありがとう……藤本くん。キミは充分よくやってくれた。西東くん、中田くん。明日香くんが回復するまで、時間稼ぎを手伝ってほしい。いけるか!?」
「舐めてるんっスか、係長!? 時間稼ぎ程度できねぇ~んなら、今…こんなところに来ていませんよ。なぁ……チビお嬢さん?」
 大型白バイFJR1300APに跨り、背後に立っている素子に視線を送りながら、欄はそう答える。すると、それに付け加えるように、
「うん、バカヤンキーの言う通り。もう二度と無様な姿は晒さない。」
 ガチャ!と拳銃の弾倉を戻しながら、欄の乗る白バイの後部座席に乗り込む素子。
 それを見た和は、
「キミ達、やっと協力し合えるようになってくれたのか!?」と、嬉しそうに問いた。
「まぁ、敵にやられて足引っ張って無様なトコ晒すくらいなら、その場だけでもお互いに手を組んだ方が……まだマシって事に話がついたんスよ。」
 そう返しながらアクセルを吹かす欄。
「じゃ、ちょっくら相手してきますんで、指示お願いしますよ!」
「うん、それじゃ……あの二体の間に、なんとか入り込んでくれ!」
「了解~っ!」
 欄はそう返答すると、勢いよく白バイを発車させる。
「中田くん。今の奴らは、本能的に弾道を予測できるようだ。だから、いくらキミでも仕留めるのは難しいと思う。まずは奴等の注意をキミ達に引き付けてくれ!」
 通信機を使って、白バイの後部座席に座っている素子にも指示を出す和。
 素子はその指示に頷くと、拳銃を両手で握りしめ、オークたちの足元を狙う。
バンッ! バンッ!!
 発射と同時に、飛び跳ねてその銃弾を避けるハイパーオークたち。
「ホントだ。ボクの目線か…構えか? それとも完全に本能的な予知なのか? どっちか判らないけど、普通に狙って撃ったら避けられそう。」
 和の言う通り、むやみやたらに発砲しても、無駄だと悟る素子。
「西東くん! 少々危険だが、少しの間……奴らの間を行き来してくれないか!?」
「了解!」
 和の指示に従い、褐色と通常の肌の二体のオークの間を行ったり来たりと、何度も反復する欄。二体のオークは、欄が操る白バイの動きを不審に思いながらも、ジワジワと間を詰めていく。
 そんなオークたちの動きを、ジッと見据える和。そして、何かに気づいたように、
「西東くん! 褐色ではない方の……普通のオークの背後を取るように、反転してくれ!!」
「了解!」
 いきなりの和の指示だが、欄は焦りもせずに、ハンドル…アクセル、ブレーキを巧みに操り猛烈なアクセルターン。一気に通常のハイパーオークの背後に着こうとする。
 当然それに気づいたオークも背後を取られないように、瞬時に身を捻って対応する!
「今だ、中田くん!! ヤツの軸足を狙え!!」
――軸足っ!?―
 激しい揺れを伴う白バイの後部座席だが、素子はその言葉を待っていたかのように両腕を伸ばし、間髪入れずに発砲をした!!
バンッ!!
 マグナムの発射音と同時に、身を捻ったオークの軸足である右太腿を撃ち抜く!!
ドシンッ!! 
 両手で撃たれた脚を押さえ、地響きを立てながら、その場で引っくり返るオーク。
「中田くん! そのままヤツの鎧の背中を撃つんだ!!」
 更に出された指示に、素子は冷静に頷くと、一発……二発とオークの鎧の背中を撃ち抜いていく。
 すると軽鎧はバチバチバチッ!と火花が飛び散り、更にボウッ!と発火し、燃え始めた。
「よくやった中田くん! そこが奴等の弱点である、強化アーマーのバッテリー部分らしい。ですね……? 瑞鳥川さん。」
「そう言う事。あの強化アーマーの基本構造は、ボンベーガールの強化服と同じだからね。背中部分に装着されているバッテリーシステムを破壊すれば、機能は停止。後は、重たく動きづらい……ただの鉄の塊となる。
 それよりも和くん。奴らは弾道を予測できたのに、どうして銃弾を命中させる事ができたんだ?」
 瑞鳥川の問い掛けに、和は戦場から目を離さず……耳だけを傾け、
「奴らがどうやって弾道を予測していたのかは不明ですが、生物である以上……運動力学の応用が使えると考えました。捻りの運動では、軸となる部分に時間的ロスが生じる。つまり身を捻っている瞬間なら、仮に弾道を予測できても、体重の掛かっている軸足は、瞬時に動かすことができない。肌色が普通のヤツを狙わせたのは、ヤツの方が動きが若干鈍かったからです。」
 と答えた。
――そんな事よりも僕の驚きは、やはり…このメンバーは、一つになればこんなにも頼もしい仲間だと、改めて認識出来たことだ!―
「たかが……人間の分際で、あまり調子に乗るんじゃありませんわ! ハイパーオーク、なんとしてもあの人間たちをぶち殺しなさい!」
 勝利を目前としていたのに、アッと言う間に形勢を逆転されたミンスー。その怒りは、「ぶち殺しなさい!」などと、日頃使わない乱暴な言葉遣いからも察することができる。
 ミンスーの命令に従うまでも無いと言わんばかりに、最後に残った褐色のオークが瀾たちへ向かっていく。
「あと一匹! いくぜ、チビお嬢!!」
 瀾はそう叫ぶと、再びアクセルを吹かし白バイを発進! 動きを読まれないように、蛇行運転で褐色のオークへ向かっていく。
 そして一気に加速し、褐色オークの脇を通り過ぎる。そして、敵の背後を取るように急反転!! その瞬間には、素子も拳銃を構えている。
 だが、褐色のオークは瀾たちの動きに合わせるように振り返りながら、そのまま大きく跳び上がった!!
「クスッ! バカなの!? 跳び避けたら、尚更動きが制限されるのに♪」
 そう呟きながら拳銃を向けた素子だが、
「ち、違う……! 跳び避けたんじゃなく……」
 そう、褐色のオークは弾道を跳び避けたのではなく、逆に、攻撃しようとしている素子たちに向かって、飛び込んでいったのだ!!
バンッ!!
 慌てて発砲する素子。しかし、素子ほどの名手でも、焦れば当然…狙いは外れてしまう。
 銃弾はオークの左腕を微かに掠ったものの、逆にオークの渾身の右拳が、瀾と素子の二人が乗る白バイに、カウンター気味に炸裂!!
バァァァン!!
 二人は、十数メートル程弾き飛ばされ、激しく大地に叩きつけられた。
 その衝撃はあまりに強かったのだろう。二人とも倒れたままピクリとも動かない。
 トドメを差そうと、そのまま走り寄る褐色のオーク!
 その時っ!!
「ガール・ライトニングキィィィィック!!」
 青白い火花を散らした飛び蹴りが、褐色オークに直撃した!!
 ボウリングの球のように、勢い良く転がっていく褐色オーク。もちろん蹴りの主は、ターディグラダ・ガールである……明日香だ!
「ありがとうございます……和係長、瑞鳥川さん。そして……皆さん! お陰様で、なんとか動けるようになりました!」
 明日香はそう言って、全員に向けて敬礼をした。
「あの水無月さんの治療薬の効き目は凄いな! まさか、こんな短時間で明日香くんが復帰できるとは……!?」
「ま、復活早々……ライトニングキックだから、これであの豚野郎もオシマイだろう♪」
 明日香の言葉に、薄ら笑いを浮かべてオークを眺める瑞鳥川。だが、そんな笑みも束の間で消える。
 口元から滴り落ちる赤い血を拭いながら、褐色オークは立ち上がったのだ。血眼になったその目は、妖気でも発しているかのように、爛々と輝いている。
「たしかにダメージは負っている。だが、元々強靭な肉体のオークが、あの強化アーマーで更に強化された分、防御力も上がっているのかも知れない……」
 立ち上がるオークを見つめながら、和はそう推測した。
――係長の言う通りだと思うけど、でも…それだけじゃない。直接戦ってみればわかる! あの褐色のオークだけは、他のオークに比べて精神力も……体力も、大きく上回っている!―
 空手という武術を鍛錬している明日香。そのため種族は違っても、相まみえる事で相手の潜在的強さを見抜くことができるのであろう。
 褐色オークも、もっとも楽しみにしていたウィンナーソーセージが、再び自分に牙を向いてきたのだ。なんとしても、もう一度ウィンナーにして茹で上げて、喰ってやろうと意気込んでいるのであろう。なぜなら、相当ダメージを負っているはずなのに、その鼻息は今までとは比でないからだ。
「瑞鳥川さん。私の行動時間は、あと…どれ位持ちますか?」
「う~ん……、かなり戦っているし、一度はウィンナーにされてシステムも結構損傷しているからね。持ってあと2~3分……。ライトニングキックも、あと一発撃てればいい方だね。」
 瑞鳥川のその返答に、明日香は気を引き締めてオークを睨みつける。
――あと…2~3分。ライトニングキックも、あと一発のみ……。なにか、他に手は……!?。―
「じゃあ! 俺……、手を貸すぜ!」
 そう言って声を掛けてきたのは、つい今しがたまで気絶していた瀾。
「手を貸すって、何をするんだ西東くん?」
 明日香ではなく、代わりに返答したのは…和であった。
「橘巡査って、前回……FJR1300AP(白バイ)の加速力を使って技を決めたんッスよね? 俺が運転すりゃ、もっと速くなり威力も倍増スよ!」
「そ、それはそうだが……。だが、相手は銃弾の弾道すらも予測できるヤツだ。さっきは不意打ちだったから決められたが、正面から向かえば…それでも避けられる可能性がある。」
「だったら、ボクが援護する!」
 そう言って和に返したのは、瀾同様……今しがたまで気を失っていた素子。その手には狙撃用ライフル銃が握られている。
「バイクに乗らずに撃つなら、このM1500(ライフル)が使える。これならM686(拳銃)よりも弾速が速くて正確だ。」
 和は、瀾と素子。二人の自信溢れる言葉に、「わかった!」そう言って頷くと、こう付け加えた。
「キミ達が一つになれば、絶対に敵を倒せるはずだ! ここはキミ達に全て任せる!」
 瀾は早速白バイのエンジンを掛け直すと、
「そんじゃ~ぁ……橘巡査、後ろに乗ってくれ。俺ぁ…速ぇ~から、振り落とされないでくれよ!」
「うん、期待している!」
 明日香を乗せると、瀾は二回三回とアクセルを吹かし、土埃を上げながら反転すると、褐色オークとは逆方向へ凄まじいスピードで走り出した。
 そして数百メートル程行き距離を空けると、再び反転。褐色オークを目指してガチャガチャとギアを切り替え、どんどん加速していった!
 そんな瀾たちを待ち構える褐色オーク。つま先立ちで腰を落として重心を下げ、どちらにでも動けるように身構える。
……キュンッ!!
 そこへ拳銃よりも遥かに速い、ライフル独特の風切音が耳をかすめる。撃ったのは、もちろん素子だ!
 だが、驚くべきは褐色オーク。明日香が感じた通り、このオークは並のオークたちよりも遥かに潜在能力が高いのであろう。
 銃声が鳴るか鳴らないかの刹那の瞬間。咄嗟に身を伏せ、弾道を避けたのだ!
 まさしくそれは、理屈ではない……、正真正銘の強者の本能。
 しかし、その身を伏せたのが不味かった!
 次に襲いかかる攻撃に対して、反応が遅れてしまったのだ!
 それは、猛スピードで突っ走ってくる白バイ。それが急激にブレーキを掛ければ、後部座席で構えていた明日香はどうなるだろう? 
 走っているバスや電車内で急ブレーキを掛けられ、前のめりに倒れそうになった経験は無いだろうか?
 それは慣性の法則。本体が止まろうとしても、それに乗っている物は、それまでの速度で進もうとする性質。
 瀾は、200km近い速度で走っていた。そこへ急ブレーキ。
 それは、まるで中世の投石武器の発射台のように、後輪が一気に跳ね上がるほどのもの。
 そこに乗っていた明日香は、慣性の法則で前方へ弾き飛んで行く。
 その速度による運動エネルギーをプラスして、青白い火花を放つ…必殺の飛び蹴り!
「ガール・アクセルライトニング……キィィィィック!!」

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 素子の援護射撃から身を伏せていた褐色オーク。必死に立ち上がって避けようとしたが、流石に間に合わず自慢の強靭な胸に、その一撃をマトモに喰らってしまった!!
 全身から放電しているかのように青白い火花を散らしながら、数十メートルほど弾け飛ぶ褐色オーク。
 大地に叩きつけられたときには、白目を剥き出し、蟹のように泡を吹き、ピクピクと全身を痙攣させ、一目で意識が飛んでいることが解るほどだった。
「う、嘘でしょ……!? アタクシが率いた部隊が……全滅だなんて……!?」
 褐色オークが沈黙したと知ると、ただでさえ青い顔のミンスーは更に蒼白となり、
「ひぃぃぃぃぃぃっ!!」
 と、悲鳴を上げながら猛ダッシュで逃げていった。
「こらっ…待ちやがれっ!!」
 逃げ去ろうとしているミンスーを追いかけようとする欄。しかし、
「西東くん。奴は後だ! それより倒れている警官たちや、一般市民の救出が先だ!」
 そう言って和は、欄の前に立ち塞がり彼を制す!
 すると、それを待っていたかのように、数台の救急車が雪崩れ込むように次々に駆け付けてきた。
「救急車……? いつの間に……!?」
 あまりのタイミングの良さに、驚く面々。
 すると、一人黙々とパソコンを操作していた未希が、
「わたしが手配しました。もっとも、各消防署の緊急連絡網に直接入り込みましたが…」
 と、涼やかな顔で答える。
「本来なら叱るところだけど、今回だけは良しとするよ。さすがだ!」
 和は苦笑しながら、そう返した。
 オークたちと戦って倒れた警官たちは、市内各地の緊急病院へ。ウィンナーソーセージにされた女性たちは、水無月診療所へ運ばれることとなった。
 「みんな、よくやってくれた!」
 全ての救急車が立ち去った後、和は全員の顔を見渡しながら言い始めた。
「僕は今日、改めて確信したよ。このメンバーが協力し合えば、どんな未確認生物や改造生物が相手でも、そして…あらゆる緊急事態に陥っても、必ず人々を守る事ができる…と。」
 そういう和の言葉に、瑞鳥川も明日香も、そして未希や欄、素子も。誰もが嬉しそうに微笑んだ。
「僕は、そんなキミたちと一緒に働けて、本当に嬉しく思っている!」
「係長、私もCCSに配属されて、嬉しく思っています!」
「わたしもです。ただ……ネットに関しては、もう少し融通を効かせてくれると、もっと嬉しいですが。」
「係長! 県警トップクラスの俺の腕、これからも期待してくれていいぜ!」
「バカヤンキーの戯言はさて置き、ボクこそこの射撃で、誰よりも力になるよ。」
「橘ちゃん!一度でいいから…あたしと寝てくれぇ~っ!!」
 約一名、煩悩が先走っている勘違い野郎がいるが、始めてCCSが本当の意味で一つになった! 
 和はそう、喜びを感じていた。


「参りましたわ……。マスターから、『全滅しただけでは飽き足らずぅ~っ、手ぶらで帰ろうとするなんてぇ、ミンスーって度胸あるわねぇ~っ♪』なんて脅されましたわ。」
 そう…独り言を呟くミンスー。
 一度は一目散に逃げ出した彼女だが、途中…マスターであるレイカに報告を入れたところ、そのような言葉が返ってきたらしい。
「とりあえず、一人だけでも始末しておけば、なんとかお咎めを受けずに済むかもしれませんね。」
 ミンスーはそう言って公園の茂みに隠れながら、ジワジワとCCSメンバーに近づいていく。
 丁度彼らは、勝利の余韻に浸って和気あいあいとしており、油断している。狙うなら今だ!
 茂みの中から、ミンスーは真っすぐ腕を伸ばす。その指先の先にあるのは、CCSリーダーである…和だ。
シュッ!!
 まるで、矢が放たれたような風切り音が微かに鳴ると、ミンスーの人差し指が和目掛けて一気に襲い掛かる。
 その鋭い鏃のような爪先が、和の後頭部に突き刺さる寸前……!!

ダダダダダッ!!

 それはまさしく…機関銃の銃撃音。
 それが鳴り響くと同時に「ギャアァツ!」という、ミンスーの悲鳴もこだました。
 何事かと背後を振り返る和。彼の目に入ったのは、青い血に塗れた人差し指を、痛々しく握りしめているミンスーの姿であった。
「あ、あれは……先程のパーピーヤスの幹部? しかし、何があったんだ!?」
 そう言って驚く和とCCSメンバー。
 そのミンスー当人は、そんな和たちの斜め後ろの方向を睨みつけている。
「だ、誰ですの……? アタクシの邪魔をしたのは!? 名乗りなさい!!」
 和たちが、そう叫ぶミンスーの視線を追っていくと、そこには文字通り…一つの黒い人影が!
「………………。」
 ミンスーの問い掛けにも全く無言の人影は、黒いロングコート姿で、頭にはコートのフードをスッポリと覆わせており、顔は一切見えない。だが、赤い瞳らしきものがギラギラと輝いているのだけは、何となくわかる。
「あ、あれは……!?」
 更に和たちを驚かせる出来事が、もう一つあった。
 それは、そのコートの人物が真っ直ぐミンスーに向けている…左腕!
 コートの袖を肘上まで捲り上げた…その左腕は……!
「左腕が、銃になっている……!?」
 そう、その人物の肘から下の左腕は、回転式多銃身機関銃…通称ガトリングガン(銃)と呼ばれる形状によく似ていた。

TG-06_16.jpg

「名乗るつもりはないようですね。でも……アタクシの知る限りでは、左腕が銃になる者は、ただ一人! この借りは、いずれ返させて頂きますわ!!」
 ミンスーは鬼のような形相でその人物を睨み続けていたが、そう叫び終えると、辺りの景色に溶け込むように、その姿を消し去っていった。
 それを確認すると、黒いコートの人物はもう用は無いと言わんばかりに、腕をゆっくりと降ろした。
 すると、瞬く間にその機関銃の腕が、人間の腕へと変化する。
「人間の腕になったり……銃になったり。しかも、その肌の色は…!?」
 驚愕する和を更にダメ押ししたのは、その人物の左腕の肌の色。日本人ではあまり見かけない、黒っぽい…? または褐色? そんな肌の色であった。
「黒い肌で、左腕が銃などの武器に変化する人物。僕にも心当たりはあるぞ!」
 和は、鋭い目つきでコートの人物にそう告げるが、その者はそれを無視して踵を返した。
「ま、待てっ!!」
 和が追いかけようとすると、コートの人物は木陰に隠しておいた、大型の自動二輪車に跨った。そして素早くエンジンを掛けると、何事もなかったかのように、その場を走り去っていった。
「係長。あの人物は係長を助けたのでしょうか? でも、あれは…多分?」
 明日香は、そう和へ問い掛ける。
「うん、おそらく助けられたのかも知れない。でも……僕たちが知る『あの女』であったのならば、彼女も敵であるはずだ!」
 喜びも束の間。和たちには、更なる謎が深まり始めていた。



  続く




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