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自己満足の果てに・・・

オリジナルマンガや小説による、形状変化(食品化・平面化など)やソフトカニバリズムを主とした、創作サイトです。

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ターディグラダ・ガール 第三話「丘福に集まった6つの星 二.一章」

 こんにちわ。
 哲学する蝕欲 るりょうりに です!

 今回はタイトル通り、『ターディグラダ・ガール』の第三話、二.一章です。
 どういうことかと言うと、後で読み返していただくとわかると思うのですが、この第三話の二章で、西東欄と中田素子の二人を迎え入れた…新生CCSのシーン。 
 そこへ彼らの第一戦目である、樫井方面からの応援要請が入ったのですが、物語はそこから一転して、スイミングスクールでのカツチとグーラの初対面となり、その後……樫井での”戦いを終えた”CCSの面々への話へ戻るわけです。

 そうです。
 樫井での戦闘を、スッポリとカットされているわけです。

 実は当時、その戦闘シーンも書いていたのですが、あまりに話が長くなったので、問題無い程度に省かせていただいたというわけです。

 ですが、次回公開予定の第六話。
 これを読むにあたって、直接関係するわけでは無いのですが、知らないよりは知っていた方がイメージが付きやすいかな?と思い、今回そのカットされた戦闘シーンをこの場で公開させていただくことにしました。

 あくまで純粋な戦闘シーンのみなので、状態変化はありません!

 また前述の通り、直接物語に関係するわけでも無いので、読まなくても…これといった問題はありません。
 ただ六話での会話の中で、「ああ、この時の戦闘のことかな?」とイメージが付いてくれれば、より感情移入がしやすいかもしれない。というだけのことです。

 というわけで、とりあえず公開させていただきます。

 ちなみに、三話二章の……

「東区樫井方面に、オーク型らしき未確認生物が複数出没。住民を襲い、現在東署職員が応戦中! TG01出動! 藤本くんはここに待機。西東くんはTG01と同じようにXP250Pで出動。中田くんは僕らと一緒に対策車両で現場へ向かう!」

 から……

「一体、何を考えているんだ……! キミたちは!?」
 応援を受けた戦闘を終え、無事に帰還したCCSの面々。

 の間の話です。

===============================
 一方こちらは、東区樫井にある大型ショッピングモール前。
「ガール・ライトニング・キィィィック!!」
 建物の壁面を利用して空高く跳び上がる。そして、そこから急降下による運動エネルギーと、電撃を加えた一撃必殺の蹴り技。
 喰らったオークは十数メートル吹き飛ぶと、そのまま泡を吹いて意識を失った。
「スゲェ! アレが噂の、ターディグラダ・ガール……最強の必殺技か!!?」
 瀾はそう言いながら、ターディグラダ・ガールこと明日香の動きを見入っていた。
「西東くん!のんびり見ている暇はないぞ。オークは他にも三体いる。キミはそのXT250Pを使って、中田くんの有効射撃距離まで誘き出すんだ!」
 和の指示が、通信機からガンガン響き渡る。
「へぃ…、へぃ……!」
 瀾は、そう適当に相槌を打つと、オフロード型白バイ……XT250Pのエンジンを吹かした。
 甲高いエンジン音を鳴らしながらオークに近寄ると、拳銃を構えた。
 彼の持つ拳銃は、最近警察で普及され始めたS&W・M360J SAKURA。一昔前の日本警察が使用していた、ニューナンブM60と同じ38口径の拳銃である。使用弾丸は .38スペシャル弾。反動が少なく、最も扱いやすい銃弾と言われているが、その分……威力は抑えられている。
 一発二発とオークの土手っ腹に命中するものの、分厚い脂肪に覆われた皮膚では、致命傷を与えることはできない。
 銃弾を受け血相を変えたオークは、棍棒を振り上げ一心不乱に瀾に向かってくる。だが、それが本来の狙い。
 白煙を上げながらアクセルターン……つまり反転すると、オークがそのまま追いついて来れる程度の速度で引き返す。
 そして、その先には拳銃を構えた素子が待ち受けているという寸法だ。
 素子の持つ拳銃は、S&W・M686という瀾の持つM360J SAKURAと同じ38口径。  
 だが、こちらは.357マグナム弾という、より破壊力の高い銃弾を撃つことができる。
 日本でも上位企業に仲間入りしている中田貴金属グループ、会長の孫。
 そんな素子は、幼いころから一年の三分の一は海外で生活しており、身を守るために射撃の練習もさせてもらっていた。そういった経緯があるからこそ、こんな少女のような風貌なのに、実弾射撃上級なんてものを一発で通ってしまうのだ。
「よしっ、西東くん!そこで離脱し、中田くんにトドメを刺させるんだ!」
 対策車両から和がそう指示を与える。それを聞くと瀾は更にアクセルを吹かし、バイクを加速させた。一気に追ってくるオークとの距離が広がる。
 ところが……。
「冗談じゃ、ねぇーぜ!」
 何を思ったのか瀾は、百数十メートル程離れた先で再びアクセルターンをすると、オークに向かって猛スピードで突進してきた。そして歩道の縁石の区切り目を利用して、そのまま高々とジャンプ。XT250P(バイク)ごと激しい勢いで圧し掛かるようにオークにぶち当たった!!
ブギャァァァァァッ!! 
 まさしく獣の雄叫びのような悲鳴をあげ、XT250Pに押し潰され倒れたオーク。
「フンッ! 銃が得意でなくても、てめぇ等みたいな豚野郎を倒す手は、いくらでもあんだよ!」
 瀾は倒れ伏せているオークを見下ろしながら、意気揚々と語った。
「西東くん、油断するな! 相手はまだ沈黙していないぞ!!」
 和から、そう警告めいた通信が入ると同時に、倒れていたはずのオークが再び起き上がる。そして瀾が乗っているXT250Pを掴むと、そのまま高々と持ち上げた!
 必死にXTにしがみつく瀾ごと二回……三回と振り回し勢いをつけ、まるで砲丸投げのように放り投げた。
 激しく道路に叩きつけられるXTと瀾。そんな瀾に向かって、蒸気が吹き荒れるヤカンのような顔をしたオークが、ノシ…ノシ…と歩み寄ってくる。
「こっちだって……簡単にやられるかよ!」
 そう呟きながら立ち上がろうとした瀾。しかし……
ズキッ!! 
 鋭い痛みが足首に響き渡り、「痛ぇぇぇぇぇっ!」瀾は再び道路に倒れ伏せてしまった。苦しみながら足首に目をやると、そこは真っ赤に腫れ上がっている。
「チッ!今ので挫いたか? マジかよ……」
 その言葉が通信機を通して和の耳に入る。
「やばい……! 今、中田くんは……!?」
 和はドローンを操作し、素子の状況を確認する。
 素子は丁度、駐車してある車に身を潜めながら、もう一体のオークを相手にしていた。
「中田くん、西東くんが足を負傷した。先に西東くんを援護してくれ!」
 和からの通信を受取り、チラリと瀾の方に視線を移した素子。
 しかし、「自業自得……」そう呟くと、我……関知せずといわんばかりに、もう一体のオークに銃を向けた。
 射撃の基本は一撃で敵を倒そうとするのではなく、まず一撃目で敵の動きを止め、二撃目で仕留める。
 それを忠実に守る素子。一発目の銃弾は、棍棒を振りかぶる右腕に命中。さすがはマグナム弾! 右腕は棍棒を握ったまま、胴体から吹き飛んだ!!
「余裕だね……」
 素子はトドメを刺さんとばかりに、今度は頭部を狙って銃を構えた。
 だが、そこに油断があった。トドメを刺すことばかりに集中し、潜めていた姿を丸出しにしてしまったのだ。
 自分を傷つけた敵の位置を把握したオーク。右腕は失いはしたものの、むしろ手負いの野生怪物と化し、一足飛びで素子に駆け寄る。
 それは、今まで射撃場の的しか射ってこなかった素子にとって、まるで予想もつかないほどの動きと速さ。ほんの一瞬で、目と鼻の先まで、敵の接近を許してしまった。
 野球のグラブのような大きな左手を高々と振り上げるオーク。
「ひぃ……っ!」
 意識的に避けたのか? それとも恐怖で腰を抜かしたのか? どちらにしろ、運良くオークの一撃をかわした素子。その一撃は素子の脇にあった乗用車を、一瞬でペチャンコにした。
 一撃目は外したものの、その怒りの篭った瞳は獲物を逃がさない。オークは再び素子の頭を粉砕しようと、その左手を振り下ろした。

ガシッッッ!!
  
 すぐ目の前で、何かが交錯した。一つはオークの大きな手。もう一つは、白く細い棒のようなもの。いや、それは棒では無く……腕だ! ターディグラダ・ガールの白い左腕。
 そう……間一髪、明日香のガードが素子を救ったのだ。先ほどまで他のオークを相手にしていた明日香。それを撃退したときに目に入ったのが、素子の危機。無我夢中で駆け寄り……差し出した腕が、素子を襲う一撃を食い止めたのだ。
「怪我はありませんか、中田巡査?」
 ヘルメット越しに放たれる明日香の優しい声。
「う…うん……」
「よかった!」
 明日香はそう言うと左腕を払い、オークを弾き返す。そして、間髪入れずに左右のパンチによる連打攻撃。割と防御力の高いオークもさすがに堪えられず、その場で仰向けにひっくり返った。
 そこへ、
「明日香くん、聞こえるか!?」
 和より通信が入る。
「明日香くん、大至急……西東くんを援護してくれ!大至急だ!」
 和の言葉に振り返ると、そこでは瀾が負傷した足を引き摺りながら、必死で拳銃を乱射していた。
「中田巡査。あなたの銃を貸してくれませんか?」
 そう言って明日香は手を出した。
「いいけど、これ……いちお、マグナムだから……」
「わかっています」
 明日香は素子から拳銃M686を受け取ると、右手一本で構える。
 パンッ!!
 やや重い発射音が鳴り、更に……パンッ!! パンッ!!と三連射! 
 さすがのマグナム三連発!三発とも丸々太った胴体に命中し、オークは数メートルほど吹っ飛ぶと、そのまま沈黙した。
「うそ……でしょ……? マグナム弾を片手で連射だなんて……」
 目を皿のように丸くし、呆然とする素子。
「私……、強化服のお陰で通常の10倍の腕力があるんです。だからマグナムと言っても、反動は無いようなもの。でも、命中率は中田巡査の足元にも及ばないと思います」
 その後、まだ息のあるオークはそのまま捕獲し連行され、応戦していた東署職員たちは、全員無事に帰還した。

================================

 というわけで、ここまでです。

 現在第六話は執筆中で、今のペースでいくと、9月末くらいの公開になりそうです。

 では、また近況報告等で報告いたしますね! (^.^)ノシ


 
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| ターディグラダ・ガール | 18:35 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

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ターディグラダ・ガール 第五話「誰も見ることのできなかった戦い」 序章

「す……凄い……!!」
 ここ丘福中央公園で、青い髪の女子高生くらいと思われる年頃の少女が、一つの激しい戦いを見守るように見つめていた。
 その戦いというのは、二人の人物による一対一の戦い。
 一人は、紋章が組み込まれている円周の大きいベレー帽、紫色の衣に身を包んだ、銀髪の女性。
「ダーク……」
 女性は、重く呟くような声で両手を掲げると、その間にはまるで橋が架かったように黒い稲光が流れ渡る。
 もう片方は小柄な少年……。いや……!? 短い髪に凛々しい顔立ち。たしかにボーイッシュではあるが、よく見ると身体の線も細く、ミニスカートを履いており、どうやら十代半ばくらいの『少女』のようである。
「サンダー……」
 凛とした高めの声で右手の人差し指をゆっくり上げていくと、それを追うように黄金色の火花が、蛍の淡い光線のように後をついて行く。

ターディグラダ・ガール 第五話01

「ライジング!!」
「ブレイク!!」
 そして、二人が同時に腕を振り下ろすと、その腕や指先から激しい稲光と共に雷撃が放たれた。

 ガガガガガガガガガガッッ!!

 中央で、黒い雷と黄金色の雷がぶつかり合い、目を覆うような閃光と激しい雷鳴が辺り響かせる。
 いや、一見互角に見える競り合いも、徐々に……徐々に、黒い雷が押しはじめ、黄金色の雷は打ち消されるように押し戻されていく。
 そして、押し戻されながら混ざりあった二つの雷は、ボーイッシュな少女を目掛けて、まるで飢えた獣のように襲いかかり、激しい爆炎となった。その衝撃に少女の身体は、十数メートル程吹き飛ばされる。
「ミ……ミオちゃん!?」
 見守っていた青い髪の少女は、あわてて『ミオ』と呼んだ少女に駆け寄りながら、
「すぐに、治癒魔法を掛けるからーっ!」と両手を掲げる。
 それを目にした銀髪の女性、
「邪魔をするな!!」
 その青髪の少女の足元を目掛けて、黒い雷を放った。
ガガガガッッ!!
 少女の足元で、まるで火山が噴火でもしたかと思わせるような、激しい土埃が舞い上がる。
「きゃあああ~っ!!」
 腰を抜かして、その場にしゃがみ込んでしまった少女の目と鼻の先は、抉り取られたような、直径10メートルほどの大きな穴が開いていた。
「次に余計な動きをすれば、今度はお前自身を狙い撃つ! よいな?」
 銀髪の女性は改めて青髪の少女に狙いを定めると、そう警告を与える。
 すると、
「セイナさん、ボクは…大丈夫。でも危険だから、もう少し離れていたほうがいいよ……」
 吹き飛ばされたミオという名の少女は、そう言いながら土埃で真っ黒になった顔を手の甲で拭うと、ニッコリ笑って立ち上がった。そして銀髪の女性をキッ!と睨みつけると、再び歩み寄っていった。
「さすがは……我が妹弟子ウィンディ―の娘、ミオ。その目……その振る舞い。そして諦めない闘志。母親に、よく似ておるわ!」
 銀髪の女性……『ラビス・インダーク』は、そんなミオを見つめながらそう微笑んだ。


 
 その頃、同じ中央公園内……少し離れた場所では、もう一つ別の戦いが行われていた。
 それは、片や…赤褐色の肌に緑色の髪。黄金色の瞳に尖った耳のボディコン女性。

ターディグラダ・ガール 第五話02

 もう片方は、歳の頃合い10歳にも満たなそうな金髪縦ロールの少女を中心に、四人の異形な姿をした女性たちが並んでいる。

ターディグラダ・ガール 第五話03

 更に、そのあまりにも異様な光景に、多くの人々がその周りを取り囲むように集まりだした。
「シグーネ! 貴女は、ワタシに勝てませーん!」
 そんな四人の異形な女性のうちの一人、全身がゴムか……もしくは粘土のように伸びたり縮んだりする不思議な能力を持った女性。名はネリケシオンナ。
 彼女は、シグーネと言う名の赤褐色のボディコン女性にそう告げると、勢いよく飛び出し、彼女の身体を抱きしめるような形で包み込んだ。
「前回のように、貴女の魔力を吸い尽くして、消しゴムにしてあげまーす!」
「それは無理だね!」
 シグーネと呼ばれる女性は、不敵な笑みを浮かべながら、
「今日はあの時のような様子見ではないからね。悪いけど、少しだけ本気になって勝ちにいくわ! ちなみに今のアタシは、前回の100倍以上の魔力になっている。とてもアンタには吸い尽くせないよ!」と、言い放った。
 するとネリケシオンナの背中から、プスプスと白煙が立ち昇り始める。
「ひ……ひぇぇぇぇぇつ!!」
 同時に、耳を劈(つんざ)くような金切り声と、更に彼女の背中から激しい炎が立ち上がった。
「それともう一つ。アタシは四大元素魔法のすべてを使いこなすことができる。ホントはあの時だって、こうやってアンタの身体を炎上させることも可能だったんだけどね!」
 シグーネは、炎を纏いながら慌てふためくネリケシオンナを眺めながらクスクスと笑みを浮かべた。
「プ……プウーペ様ぁ~っ、たすけて~~ぇ!!」
 背中の炎を消すため? それとも激しい熱さのため? 無論、その両方のため!? ネリケシオンナは地べたに横たわり、右へ左へと必死に転げ回る。
「み、みんな! ネリケシオンナの火を消してあげるのデス!」
 プウーペという名の金髪縦ロールの少女は、そう叫びながら自身が身に纏っているドレスを脱ぎ、ネリケシオンナの身体に被せて火を消そうとする。
 他の三人も布切れなどを覆い被せたり、一人はバケツを持って水を汲みに行ったりして、やっとのことでネリケシオンナの炎を消してやることができた。
「もう大丈夫ですヨ……。アジトへ戻ったら、身体を修復してあげますネ!」
 プウーペはそう言って、ガタガタと震えているネリケシオンナの身体を、静かに抱きしめてやった。
「ハーイ、次の相手はどいつ?」
 そんなことはお構いなしと言わんばかりに、シグーネはプウーペ達を相手に手招きをする。
「次はアタイが相手だ!」
 そう叫んで前に出たのは、ハッピにニッカズボン、ねじり鉢巻き。ガテン系女子……セメントオンナである。
 両手に持った『コテ』を振り回すと、灰色の土塊のようなものが飛んでいく。それは、セメントオンナが使う特製セメント。
 それを軽くかわすシグーネ。目標を外したセメントは、周りで取り囲むように集まっていた、数人の一般女性に当たった。
「なにこれ!? 汚ぁ~い!」
 女性たちは、身体や衣類についたセメントを払い落とそうとする。だが、そのセメントは二つ……三つと分裂、まるでアメーバ―のように増殖し、女性たちの全身を覆いつくしていく。
「い、いやぁぁぁっ!!」
 女性たちの悲鳴が鳴り響く。
 やがてセメントに覆いつくされた女性たちは、誰もが石像のような姿になり固まっていた。

ターディグラダ・ガール 第五話04

「アタシのセメントは一握りでも身体についたら、アッという間に全身を覆いつくし、ソイツを石化させてしまうのさ!!」
 そう言ってセメントオンナはこれ以上に無い満面の笑みを浮かべた。
「ふ~ん、あれで石化……ねぇ?」
 シグーネは冷ややかな眼差しで、石像となった女性を見つめ鼻で笑う。
「ちっ!そのバカにした態度。いつまで続けられるかな!?」
 セメントオンナはそう叫びながら、シグーネ目掛けて次々にセメントを放り投げる。
 だが、ヒョイ!ヒョイ!と嘲笑うように避けまくるシグーネ。もっとも、シグーネが避ければ避けた分、一般人の石像が増え続けてはいったが。
「く、くそぉ~っ! 当たりさえすれば、当たりさえすれば……貴様なんか石化できるのに!!」
 悔しそうに、歯ぎしりをしているセメントオンナ。
「へぇ、当たったらアタシに勝てるつもり? じゃあ、アタシ……動かないから、当ててごらんよ!」
 シグーネはそう言うと、腕組をしたまま…その状態でピタリと動きを止めた。
 それを見たセメントオンナ。
「バカなヤツめ!」と動かないシグーネ目掛けて、セメントを投げ放つ。
 ビシャッ!!
 約束通り動かなかったシグーネに、一握りのセメントが貼りつく。それは先程までと同じように、幾つにも分裂……増殖し、アッという間にシグーネの全身を覆いつくした。
 そしてついに、見事なまでのプロポーションを保ったまま、シグーネの石像が出来上がった。
「ハハハッ! ものの見事に石化しやがった! アタシのセメントを舐めた報いだ!」
 そう高笑いしながら勝ち誇るセメントオンナ。
「やれやれ……。だから、こんなものは石化とは言わないの!」
 ピタリと固まっているシグーネの石像から、そんな声が聞こえた。すると、その石像のアチラコチラに、ビシッ!ビシッ!ビシッ!と亀裂が入る。
 その亀裂は満遍なく石像に入り、やがて……ゆで卵の殻が剥がれ落ちるように、表面の石がポロポロと崩れ落ちていった。
 その中から、まったく無傷のシグーネが現れると、
「ネッ! こんなの……ただ表面をコーティングしているだけで、石化とは言わないのよ」と、嘲笑った。
 そして右手を伸ばし、セメントオンナに照準を合わせる。
「土属性の術を愛する好(よしみ)で、本当の石化を味あわせてあげるわ。デビルズ……アイ!!!」
 シグーネの黄金色の瞳が、眩いくらいに光り輝く。
 すると、セメントオンナの足が石のようにガチガチに固まっていた。いや、それは足だけでは留まらない。徐々に膝……腰、胸……そして頭部へと身体が石へと変わっていったのだ。
 それは10秒程度の短い時間。だが、たったそれだけの時間で、そこには表面だけではなく、身体の芯から石となった、セメントオンナの姿が残った。

ターディグラダ・ガール 第五話05


「クククッ! これで二人目。さて、お次は誰かしら……」
 石像と化したセメントオンナを見下しながら、意気揚々とするシグーネ。だが、次の瞬間!
「な…!?」
 シグーネの身体が一瞬、宙を浮く。
 なんと、異形の四人のうちの一人が、シグーネを背後から抱きかかえているのだ。そして、素早く手に持った角柱型の木枠に、その身体を押し込める。
「く…苦しい……、たすけ……」
 狭い枠の中で苦しむシグーネを、更に押し込めるように突き出し棒を差し込んだ。
 彼女の名は、テンツキオンナ。
 角柱型の兜をかぶり、軽鎧に身を固めた出で立ち。彼女は、人間を天突きと呼ばれる道具に押し込め、ところてんのように突き出す能力を持っている。
 今テンツキオンナは、天突きに押し込んだシグーネを、ところてんにしてしまうつもりなのだ!
 ギュッ!ギュッ!と突き出し棒を押し込んでいくと、天突きの先から、赤褐色の細い糸状(麺状)に切り別れたところてん……いや、ところてん化したシグーネが押し出されていく。
「ああ~っ、素敵! 美味しそうなところてんが出来上がったわ♪」
 地べたに置かれた大皿の上には、赤褐色のところてんがこんもりと盛り上がっている。

ターディグラダ・ガール 第五話06

 テンツキオンナは嬉しそうにそのうちの一本を摘み上げると、三杯酢に軽く浸し、そのままツルツルと頬張った。
「はぁ~っ!美味しい♪ 見た目と違って、澄んだ爽やかな味わいだわ!」
 テンツキオンナはそう言って、もう一本摘み上げる。すると……
「そんなに美味いの? アタシも一本頂いていいかしら?」
 背後から羨ましそうな声が掛けられる。
「どうぞ!どうぞ!頂いてください。とっても美味しいですよ~♪」
 テンツキオンナは振り返りもせず、そう言ってもう一本を頬張る。
 声の主も大皿から一本手に取り、三杯酢を浸して口の中に入れる。
「なるほど、たしかにこれは美味しいわぁ! 今度、ミオでも試してみたいわ~!」
「ええ、ぜひ……そうなさってください。……って、ミオ……!?」
 声の主は、てっきりプウ―ペか、もう一人の仲間だと思いこんでいたが、彼女たちがそんな事を言うはずがない! 慌てて振り返るとそこには……
「もう一本もらうよ!」
 ところてんとなったはずのシグーネが、美味しそうにところてんを頬張っている。
「な、な、な、な、な……なぜ、貴女が……? ところてんにした……はず!?」
 テンツキオンナがどれだけ驚いたか? それはろれつの回らない彼女の言葉で察しがつくだろう。
 そんなテンツキオンナを嘲笑うようにシグーネは、
「戦闘中のアタシは、常に防御用の幻惑魔法を掛けているからね。アンタはまんまとソレに掛かったわけ! ちなみにアンタが不意打ちでところてんにしたのは、周りにいた群衆の内の一人の女の子。見た感じ……JKかJCって感じだったら、だからこんだけ爽やかな味なんだろうね!」と、他人事にように語る。

ターディグラダ・ガール 第五話07a

ターディグラダ・ガール 第五話07b

 当のテンツキオンナは、そんなシグーネの言葉がまるで耳に入っていない。どうやら相当ショックだったのだろう。シグーネと目を合わせられず、ガタガタと震えている。
「おやおや、さっきまでの威勢はどこへ行ったんだい!?」
 シグーネは鼻で笑うと、震えたまま身動き一つしないテンツキオンナの四角い兜を掴み、それをゆっくりと取り外した。
「へぇ~♪」思わずシグーネの口元が緩む。いや、シグーネでなくとも誰もが頬を緩ませるだろう。
 そこにいるのは、淡い栗色でサラリとしたセミロングヘア。ややタレ目で泣き黒子(ほくろ)がよく似合う、とても愛らしい若い女性の素顔であった。

ターディグラダ・ガール 第五話08

「なかなか可愛いじゃないの~!ちょっと味見したくなったわねー♪」
 シグーネはポツリとそう呟くと、テンツキオンナの鎧を外し、彼女の武器である天突きに、なんと……彼女自身を押し込んだのだ!
 そのまま、ギュッ!ギュッ!と突き出し棒で押し込んでいく。
 ニュルルルル~ッ!
 新しい大皿には、鮮やかな肌色のところてんが、こんもりと盛り付けられている。
「どれどれ……?」
 そのうちの一本を摘み上げ、三杯酢に浸して口へ運ぶ。
「ホォ~ッ!? 淡泊だけど、ほのかな甘味が口へ広がる。結構美味しいじゃないの~♪」
 シグーネはそう言って、さっきまでテンツキオンナだったところてんを、次から次へと口へ運んだ。

ターディグラダ・ガール 第五話09

「ああああああっ!? テンツキオンナーっ!!」
 それを見ていたプウ―ペは、顔面真っ青!
「カ…カタワクオンナ、早く……あの魔族を倒してくだサイ!」
 カタワクオンナと呼ぶ最後の一人に、そう指示を出した。
 ところが、そのカタワクオンナは、
「いやいやいやいや……。ウチじゃ……無理ですわー! ウチ、アイツとは二度戦って、二度とも負けてますねん!」
 そう叫びながら必死で拒絶する。
「だ、だけど……このままじゃ、テンツキオンナが喰いつくされてしまいマス!」
「せ、せやな……」
 一旦はしょんぼりと項垂れたが、気持ちを切り替えたように面を上げ……キッ!とシグーネを睨みつけると、「たしかに放ってはおけまへんな……」拳を振り上げ向かっていった。
 すると、
「心配しなくていいわよ。ちゃんと復活できる程度で止めておいてあげるわ。」
 シグーネはそう言って食べかけのところてんを、プウ―ペ達に返してきた。
「先に倒したアンタの部下も、巻き添えを喰った群衆たちも、今……ここで止めておけば、人魚たちの能力で回復させることができるわ。だからもう、アタシに突っかかるのは止めておきなさい。」
 それは先程までとは打って変わった真剣な眼差し。
 そんなシグーネの真剣な表情にプウ―ペは一瞬たじろいだが、小さな体を震わしながらも、負けじと言い返し始める。
「そ、そうはいきまセン。ワタシたちは、たとえ最後の一人になっても、決して身を引くわけにはいかないのデス。それに……」
「うん?」
「それに……貴女は、魔族の中でも秀でて悪名高い人物。特に己の欲望を満たすためには、どんな冷酷な行いでも平然とやり遂げると聞いてマス。そんな貴女が、ワタシたちの仲間や何も関係の無い人間の命を救うなんて、どう考えても信用できまセン。」
 そこまで一気にまくし立てると、プウ―ペは小さな拳を握りしめた。
 そんなプウ―ペの力説をシグーネは真剣に聞いていたが、やがて……「フッ!」と、軽く鼻で笑い、
「そうだね。でも、こう見えても……今アタシは、自分の本音を話しているんだよ。」と答えた。
「えっ!?」
「たしかにアンタの言う通り、アタシ自身…自分の欲望のためには、いくらでも他人に冷酷になるわ。アンタの部下や、そこいらの人間が死のうが喰われようが、ぶっちゃけ……全く気にならないのよね。でも、ミオはそうじゃない。たとえ敵であろうと、自業自得で巻き添えを喰らった人間であろうと、勝利のためにアタシがソイツ等を見殺しにしたと聞けば、あの子は本気で悲しむだろうね。」
「勝利のためデモ……?」
「そう。そしてアタシが一番怖いのは、それ! ミオを悲しませること。だからアタシはそうならないように。ただ、その一心で、アンタたちの命でも見捨てるわけにはいかないのよ。」
 シグーネはここまで言うと、珍しく眉や目尻を下げ……優しげに微笑んだ。
「で、でも……これは戦いデス。ワタシと貴女が敵である以上、どちらかが倒れるまで止めるわけには……」
「いいんじゃないの? 止めても!?」
「!?」
「だって、アタシとアンタのどっちが倒れても、この戦いが終わるわけではない。結局……最後は、ミオとラビスの決着次第でしょう? だったら、それこそこれ以上アタシたちが戦うのは無駄だと思わない?」
「う……っ。そ、それは…そうですガ…」
 シグーネの如何にもな正論に、プウ―ペは言葉を詰まらせる。
「わかったのなら見に行くわよ、あの二人の決着を!」
 シグーネはそこまで言うと、クルッ!と踵を返し、ミオとラビスが戦っている場所に向かって歩き出した。
「プウ―ペ様……。どないします?」
 カタワクオンナの問いにプウ―ペはしばらく考え込んだが、
「たしかに一番大切なのは、ラビス様が神楽巫緒(ミオ)に倒されないことです。ワタシはラビス様の元へ向かいますので、カタワクは倒れたツーレム達をアジトへ連れて帰ってくだサイ」と答え、自身はテクテクとシグーネの後を追っていった。

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ターディグラダ・ガール 第五話「誰も見ることのできなかった戦い」 二章

「状況はどう?」
 ミオとラビスの戦闘現場に着いたシグーネは、ずっと様子を見守っている青髪の少女……セイナに声を掛けた。
「あ、シグーネさん? まだ……これといった決め手はないけど、ミオちゃんの方が押されている。」
「そうか……」
 シグーネとプウーペが到着しても、まったくそれに気づかず戦いを続けているミオとラビス。
「こんな戦い、まったくもって時間の無駄だ。早くアジトへ戻って、先日完成したばかりのカラオケルームで、ワラワは『マイ・ウェイ』を熱唱せねばならん!」
 戦いなから、唐突に妙な事を口走るラビス。それを耳にしたプウーペは、
――また、アジトにそんな物を作ったのですカ? いつもながら、ラビス様は……。―
 と、呆れた表情。
「神楽巫緒よ……。そんな訳で、さっさと終わりにしてやる!」
 ラビスはそう言って、ベルトに備えてあった小さな杖を取り出した。
「ダーク・メタモルフォーゼ!」
 ラビスが手にする杖から放たれる怪しい光。必死で飛び避けたミオだが、そのためその光は、周りに集まっている野次馬の一人である、まるでモデルのような美しいボディーラインのOLらしき女性に当たってしまった。
「いや、なによ……これ!?」
 光が女性の全身を覆いつくすと、徐々に……徐々に女性の姿が変貌し始めていく。
 切れ長の目はつぶらな丸い目となり、高い鼻……厚めの色っぽい唇は合体したように一つとなり、尖った嘴に変わる。長い脚は短く、細い腕は平たく大きく……翼と変わる。
 そして本人にとって最も屈辱であろう、ボンッ!キュッ!ボンッ!のくびれたボディ!
「やだ、あたしのナイスバディ―が……!?」
 細いウエストは太く丸く。自慢のFカップはストンと平ら、そう……そのものズバリの『鳩胸』に!
「クルッ…クルッ!」
 なんと、あの美しい若きOLは、どこにでも居そうな一羽の鳩となってしまったのだ!

ターディグラダ・ガール 第五話10

「は……鳩に、変わった……!?」
 予想もしなかったラビスの術に、ミオもセイナもあまりの驚愕で目が釘付けとなる。
「変化は動物だけではないぞ。」
 そう言うラビスの持つ杖から、再び光が放たれる。必死に光を飛び避けるミオ。
 それは、またしても野次馬の一人、十代後半くらいの少女に当たった。
 実は彼女、あの有名なアイドルユニット……『OKF48.5』、チームK所属の野村咲夜(のむらさくや)であった。レッスン帰りに人混みを見つけ、そのまま一緒に見物してたが、まさか自分に変身光線が当たってしまうとは!?
 全身が光に包まれると、まるで前後から見えない壁に挟まれていくかのように、彼女の身体はゆっくり……ゆっくり、ぎゅ~~っ!と押し潰されていく。もう、その厚さは1㎝にも満たないだろう。だが、そこで終わりではない。
 今度は頭の先と爪先を見えない手に摘まれたかのように、上下にグィ~~ンと引っ張られ、同様に両脇を左右に引っ張られると、一気に放された。
 それはまるで、引っ張ったゴムを手放すと反動でバチ~~ンッ!と縮むように、彼女の身体も一気に縮む。
 これを10回程繰り返された彼女の身体は、幅2cm…長さ10cm程の小さな薄い板状に。それはまさに、一枚の『チューインガム』。

ターディグラダ・ガール 第五話11

「こ、こんどは女の子が……ガムみたいに!?」
 新たな少女の変化に、またしても釘付けになるミオ。
「ワラワの変化の術は、人間以外の物なら何でも変化させることができる。動物であろうと物品であろうと、そして食品であろうと……な!」
 まるで少女の変化を楽しんだように、ラビスは冷やかな笑みを浮かべていた。
 そうこう言っていると、ガムになった咲夜に一陣の風が舞い込んだ。咲夜はその風に乗って宙を漂うと、戦いを傍観していたシグーネの足元にポトリと落ちた。
「あら、ガムになった女の子。ふ~ん、アタシに食べてもらいたいのかしら?」
 シグーネはガムを拾うと、ニヤリと微笑む。
 もちろんガムになったとはいえ、咲夜自身が食べられたいなんて願っているはずは無い。
 だがシグーネは、食材となった女の子は全て自分に食べられたいと思っている……なんて、都合の良い解釈ができる女だ。
「それじゃ、いただくとするわ!」
 手にしたガムを嬉しそうに口の中に放り込む。
 シグーネの歯がムシャ…ムシャ…と噛みしめる度に、咲夜は……、
「きぅ……」「ぷぴぃ……」と、可笑しな奇声をあげ続けた。
 だが、笑わないでほしい。ガムとなった彼女は、頭部も脚も皮膚も神経も……、全てが統一化している。つまり全身が神経であり筋肉であり、そして性感帯でもある。
 噛まれることで全身が刺激され、今まで体験したことのないエクスタシィを感じていたに他ならない。
 それによって、ガムと化したその身体からは香りや体液だけでなく、人気アイドルとして口にするのも恥ずかしいような汁も、多少放出していたようだ。
「ふ~ん! この子……見た目は随分カワイコぶっていたけど、結構……下品な味もするのね! でも、それがいい♪」
 そう言いながら更にクチャクチャと噛み締め、十分なほど咲夜ガムを味わうシグーネ。
 しばらくして、隣で戦闘を見守っているセイナに向かって、
「ちょっと、手を出して~!」と声をかけた。
 セイナは言われた通り手を差し伸べると、なんと……シグーネは、噛み続けていた咲夜ガムを「プッ!」と、その手に吐き出したのだ。
「な、な、な、何するんですかぁ~っ!汚いーっ!!」
 思わず手を振り、グニャグニャのガムを払い落とそうとするセイナ。
「捨てたら駄目よ! そんな形(なり)だけど、その子……まだ生きているからね。」
「えっ!?」
 シグーネの言葉に、改めて噛み潰れたガムを見直すセイナ。
 残骸としか思えない噛み潰されたガムではあるが、よく見ると……微かに鼓動のようなものが聞こえ、表面では目らしきものがグルグルと回っている。そう、こんな状態でも咲夜はまだ生きているのだ!?
「ホント……です。この人……まだ生きている?」
「ラビスの闇の力が衰えさえすれば、その子たちはアンタたち人魚の術で、元に戻す事ができるわ。だからそれまで、しっかり保護してあげなさい!」
 なんか、上手いこと言いくるめられたような気がしないでもないが、
「わかりました!」
 セイナは素直にそう言うと、吐き出された咲夜ガムを自分のハンカチで包むと、やさしく握りしめた。

「さて、次はどいつが物や動物に変化するかな?」
 対戦相手であるミオよりも、周りで見物している群衆に杖を向け、ラビスはニヤリと冷笑する。
「こ…これ以上、罪の無い人に手を出させはしない!!」
 そう叫んだミオは、右掌を伸ばしラビスへ向けた。
「くらえぇぇぇぇっ!! ホーリー・ライトぉぉっ!!」
 伸ばした右掌から眩い光が広がると、それは一気に真っ白な光の束となって放たれた!
――ラビスの魔法属性は『闇』! その闇属性に有効なのは、『光』属性……!!―
 そう、ミオが新たに放った魔法は、闇属性に最も効果の高い、光属性魔法。
「ほぅ!? さすがはウィンディーの娘、神楽巫緒。母同様……光でワラワを封じ込める気か。だが……」
 ラビスは自身も左手を長々と伸ばし、その掌から紫色で半透明の壁を繰り出した。壁はミオが放つ光属性魔法を軽々と受け止める。
「お前の母……ウィンディーの光の術ですら、ワラワの闇魔力に歯が立たず、結局……増幅装置まで引っ張り出して、やっとワラワを封じ込めることができたと言うのに。なのに、お前ごときの魔力で、ワラワに敵うと思っておるのか?」
 ラビスの言葉通り、ミオ……渾身のホーリー・ライトは、ラビスの繰り出した壁に遮られたままだ。
「シグーネさん、ミオちゃんの魔法はラビスを打ち破れそう?」
 ミオとラビスの攻防を心配そうに見守りながら、シグーネに問いかけるセイナ。
 その問いにシグーネは、
「ラビスの属性は闇。そしてミオが今……放っているのは、光属性魔法。属性だけで見ればミオの方が有利だけど、それはあくまで同レベルの場合ね。ミオとラビスの魔力レベルの差は、ラビスの方が1……もしくは2段階、上ってとこかしら? だから、今のミオがラビスを倒すのは、ちょっと難しいかもね……」と返答した。
「もう少し……歯ごたえがあると思っておったが、所詮はこの程度か!? くだらん、そろそろ決着(けり)を着けてやる。」
 ラビスはそう言って左手で攻撃を防ぎながら、もう片方の右手で、紫色に輝く……光の球のような物を作り出した。その光の球は徐々に大きくなり、ついにはラビスの背丈程の大きさになる。
「くたばれ、神楽巫緒。ダーク・デストロイヤー……。」
 重く、吐き捨てるように呟くと、ラビスはその紫色の光の球……ダーク・デストロイヤーを、ミオ目掛けて撃ち放った。
 撃ち放たれたダーク・デストロイヤーは、ミオの放ったホーリー・ライトを打ち消しながら唸りを上げて突き進み、無防備となったミオに襲いかかる。
ズォォォォォォォォォンッ!!
 雷鳴のような爆音、眩い閃光を放ちながら、土煙が巻き上がる。
 しばらくして土煙が収まると、そこには激しいダメージを負って虫の息となったミオが、うつ伏せに倒れていた。
「ほぉ……、まだ息があるのか? たいしたものだ。だが、もう立ち上がる事もできまい?」
 ラビスは倒れたミオに歩み寄り、仁王立ちで彼女を見下ろした。
「ハァ……ハァ…… どうしてもわからない。貴女は、なぜ……そこまで人間を目の敵にするの……?」
 肩で息をしながら、それでも黙ってはいられないのだろう。ミオは苦しそうに、そう問い掛ける。
 そんなミオに対し、ラビスは冷たく鋭い視線で見つめると、
「お前は地上界に巣食う……人間たちをどう思う? 下種な種族だと思わぬか?」と、逆に問い返した。
「下種……ですって?」
「そうだ。人間は動物や植物と違って、自分で考え判断し、行動できるという『自由』というものを創造主から与えられている。そしてその自由による行動が、人間という種族の基盤を築いている。
 しかし、その実態はどうだ!? 
 他人のために、自然を守るために……。そんな心清らかな者は極僅かで、その逆に…他人を踏みつけ、虐げ、争い、傷を負わせ、命を奪う。挙句の果てに戦争を起こす。そんな輩ばかりだ。
 そのような行為をお前はどう思う? そういった行為を人は『悪』と呼ぶのではないか?
 しかも、清らかな心を持つ善行者よりも、他人を貶める悪行者の方が、栄光を手に入れる世の中。おかしな話だと思わぬか? これを下種と言わずして、なんと言うのだ?」
 気持ちが昂っているのだろう。口調も昂ぶってくるラビス。
「ちなみに私事だが、ワラワの両親は小さいながらも一つの領地と、そこに住む村人を守り続けた領主であった。ワラワが言うのも何だが、お人好しで村人を心から愛し続けた、冴えない領主であったわ。だが、欲に塗れた余所者共が入り込み、村人たちに裏切られ、土地を奪われ……ついにはその命まで奪われた。」
「貴女の、お父さん……お母さんを……?」
「今の時代でもそうだ。栄光を手に入れた者。国を治めている者たちの心の中に、欺き、汚職、横領、恐喝、陰謀、隠ぺい……侵略、そういったものは一切無いと、お前は断言できるか?」
 そう語るラビスは、まるで歪みの無い真っすぐな眼差しである。
 そんなラビスに対し、
「貴女の言うことは、あながち間違いでは無いと思う。でも、誰もが進んで悪行を行っているわけではありません。そういったのは、本当に一部の人たちだけです!多くの人は、進んで悪行を行ったりしません!」
 これだけは譲れないと言わんばかりに、激しい形相で言い返すミオ。
 すると、ラビスはしばし間を置き……
「そうだ。確かにお前の言う通り、自身の意思で悪行を行うのは、僅かな数であろう。」と、意外な返事を返した。
 しかし、ここまで言うと、再び鋭い眼差しでミオを睨みつけ
「だが、ワラワが人間共を下種と呼ぶのは、それだけの理由では無い! もっと質(たち)の悪い者たちが、世には蔓延っているからだ!」と声を張り上げた。

「それは自身で答えを出さず、周りに流され……同調する輩共!!」

「周りに流され、同調する……者?」
「お前の言う通り、自身で考え悪行を行うのは僅かな数だ。しかし、世の中には自分自身ではろくに考えもせず、世間の動きに同調する者たちがいる。たとえそれが、悪行であったとしても……だ。 そして、この手の輩が人間の大半を占めている。」
「そんなことはありません! 時には周りの流れに乗る人も大勢いるけど、それでも人は、良い事と悪い事の区別ができます! いくら流れでも、悪行の流れに乗る人なんているはずが……!?」
「ほぅ? では、お前は『魔女狩り』を知っておるか?」
 ラビスはそんなミオに、憎しみとも悲しみとも見える、複雑な眼差しで見つめながら問いてきた。
「魔女狩り……? 実際に見たことはないけど、歴史の勉強や……雑学としてなら。」
「ある程度知っておるなら割愛するが、これに加担した多くの者たちは、真実を確かめもせず、いや……解っていても、それに目を瞑り、自分自身に火の粉が掛からぬように、周りの動きに同調していただけだ。」
「それは、そういう時代……、そういう国政でもあったから……!?」
「ならば、今の時代でお前たちに身近な話をしよう。この国にも、『いじめ』というものがあるだろう。アレはどうだ?」
「いじめ……?」
「発端は一人か二人かもしれん。だが、同じように真実や善悪から目を反らし、流れに乗って……もしくは、自身に火の粉に掛からんがために、同調して加担する者が多いのではないか? その結果、ときには死者が出ることになっても……。」
「…………」
「更に大規模なものが、『国叩き』だ。一つの国に色々な因縁をつけ、周りも一斉に叩きだす。 わかりやすい例で言えば、この国……日本叩きだ。有名なところでは、鯨問題であろう。 これも発端は一つの国だが、かなり同調した国もあるようだな?
 だが、これはまだ平和な方だ。宗教などが絡むと、もっと根が深い。これも、戦争まで発展したこともあったはずだ。
 更にもう一つ付け加えるならば、先ほどのワラワの両親を殺したのも、直接手を下したのは余所者ではない。そ奴等の根も葉もない話に惑わされ、それまでの恩を忘れて同調した、村民という愚民どもによるものだ。」
「…………」
「どれも発端は一部で、後はその他大勢が同調して、大事となっている。もし、一人一人の人間が、国が、真剣に考え……自身の答えを出していれば、こんな事にはならなかったかもしれぬ。 これを下種と言わずして、なんと言う?」
 ここまで来るとミオは口論する気力まで失ったのか、地に伏したまま、黙ってラビスの話を聞いていた。
「だからワラワは考えた。多くの人間たちが、自分で考え答えを出せるという……与えられた自由を放棄し、周りに流され同調するだけであるのならば、一切の自由を奪ってやろうと!!
 そう、まるで考える必要も無い……、物品や動物にでもしてやろうと!!」
「まさか……それが!?」
「そう。 人類形態変化計画だ。
 ワラワの術やツーレムたちの力によって、ただ流され同調するだけの下種な者たちを、人間以外の物や動物に変化させる。
 それが済んだ後に、自らの意思で悪行を行う者たちを抹殺し、始末する。そうすることによって、人間の世界は、他人を思いやり……自然を愛する、真に心の清らかな者だけとなる。理想の人間社会が出来上がるのだ!
 これこそが、人類形態変化計画の全容だ!」
 拳を握り締め、強い口調でそう叫ぶラビス。その姿には、まったく迷いといったものは見受けられない。
「他人を思いやり…自然を愛する、真に心の清らかな人間だけの世界……。理想の……人間社会?」
「どうだ? もう一度お前に問おう! ワラワと一緒に、理想の人間社会を作り上げていかぬか!?」
 たしかに、欺きや争いの無い社会は、人間にとって本当に理想社会だ。ミオの心中に、ラビスの言葉が深く突き刺さる。

「でも……」
 そう言い始めたミオは、自分の言葉に自信がないのか? まだ地に伏したままだ。しかし、拳だけは力強く握りしめられていた。
「うむ……?」
「たしかにそんな社会が築き上げられたら、本当に素晴らしいと思う。でも……、ボクが好きな人間たちの世界って、そういうのとは何か違うんです!」
「ほぅ……! 違う……とは?」
「ボクは天女族だけど、でも……人間社会の中で、人間の養父、養母に育ててもらいました。だから、ボク自身も人間と同じように、悩んで……迷い……、時には流され、そんなことも多々ありました。」
 ここまで言うとミオは、まるで生まれたばかりの子鹿のように、ブルブルと手足を震えさせながら懸命に身体を支え、ゆっくり起き上がろうとし始めた。
「でも、その度にボクはいつも……自分自身を見つめ直してきた。そして、ときには反省し、ときには自分で自分自身を励まし。それを繰り返すことで、何が自分にとって正しいのか? 自分の中の正義とは……? それらを問いただせてきたのです。」
「それは、お前だから……そういう事ができたのであろう? 他の人間共は、そんなこと……」
「いいえ、他の人たちも一緒だと思います。貴女の言う通り、最初から最後まで心が清らかな人間なんて、極々……僅かでしょう。
 それでも殆どの人は、正しいと思って進みながらも、ときには悪の道へ足を踏み入れたり、迷って流されてみたり……、元の道に戻ってきたり。行ったり来たりしながら、自分にとっての正しい道を探し続けていると思います。
 でなければ……」
 そう言いながら、震える足で懸命に大地に踏ん張り、しっかり胸を張り、凛とした眼差しでラビスを見据えた。
「でなければ……?」
 ラビスは、そんな力強く起き上がったミオの姿に、一瞬戸惑いはしたが、フトっ……嬉しそうに口元を緩ませ、今まで以上に強い視線でミオに問い返す。
「人間の歴史が、700万年も続くはずがありません! 貴女が手を下すまでも無く、もっと……もっと早く、滅んでいるはずです!!」

 自分の考えや言葉が正しいなんて、今ここでもハッキリと断言は出来ない!
 それでも、自分が正しいと思うものを信じて生きてきた! そう、教えられてきた!
 これだけは、ハッキリと言いきれる!!

――そうだよ……ミオ。本当に正しいかどうかなんて、そんなの関係ないの。アンタはいつも、迷いながらも自分が正しいと信じる道を、一生懸命突き進んできた。そんなアンタだから、アタシは誰よりもアンタが好きなんだよ!―
 これまで黙って戦況を見つめてきたシグーネ。
 いつもは冷酷で、稀に悪戯っ子のような眼差しであるが、今ばかりは……まるで母親か、姉のように優しい眼差しで、ミオの力強い姿を見つめていた。

「なるほどな! つまり、お前は『人間は、今のままで良い……』、そう言うのだな?」
「いいか……どうかは、わかりません! でも、貴女やボク個人らが、その存在をどうこうしていいとは言えません。
 人間の在り方は、人間自身が決めるべきです!
 ラビスさん、貴女は誰よりも人間世界の行く末を案じています。人間の存在を無くすことよりも、人間が正しい生き方をできるように、それこそ……一緒に考えていきませんか!?」
「人間の下種さは、変わりはせん! お前の言葉を返すなら、700万年……下種のままだ!もはや、誰かが手を下さねばならぬのだ!!」
「だったら、ボクは何があっても、人間を守り通します!!」
 自身が言うとおり、いいか……どうかではなく、今…自分が信じることを貫き通す。
 迷いがとれたミオは、再び臨戦体勢を取るように身構えた。
 完全に打ち倒したと思っていたミオが、再び戦う姿勢を見せた事に、ラビスはフッと鼻で笑うと、
「そこまで言うのであれば、ワラワも声を掛けるのはここまでとする。そう、お前はワラワの敵だ。今この場で、この付近の人間共と一緒に消し去ってくれるわ!!」
 そう叫ぶと、万歳するように高々と両手を上げた。
 すると、その両手の遥か上空に、紫とも赤とも青とも言えない……何とも怪しげな色の光を放つ球体が、火花を散らすように輝きだす。
 更にそれは、ラビスの腕に力が篭もるたびに、徐々に徐々に大きくなっていき、やがて辺り一面を、街を……、暗い影で覆い尽くす程の、大きな大きな球体となった。
「これが、ワラワの最大級の魔力を使った……、ダーク・デストロイヤーだ。」

「あ、あ……あまりにも大きすぎる。こんな大きな闇のエネルギー、見たことないですぅ!?」
 そのあまりの巨大さに、傍で眺めていたセイナは、呆然と立ち尽くす。
「これだけの魔力なら、この辺一帯どころか……神田川県全域の人間が、一気に消滅するだろうね」
 さすがのシグーネも、表情が少し強張っている。
「ラビスさんっ!! もう……止めて下さい! でないと、ボクは本気で……!」
 右手で魔法を放つ構えをとりながら、必死に引き止めようとするミオ。
「本気でなんだ!? つい先程まで寝そべっていたお前が、ワラワに一矢を報いることができると言うのか?」
 ラビスは、もう一度受け止めてやると言わんばかりに左手を差し向けると、冷ややかな笑顔で、そう言い返した。
「く、くそぉ……。ホーリー・ライトォォォっ!!」
 ミオの右掌から眩い光が広がると、再び真っ白な光の束が、ラビス目掛けて放たれた!
グォォォォン!!
 またもホーリー・ライトを、左手の魔力の壁で受け止めるラビス。
「無駄だ。こんな物……ワラワには通じないことは、先程身に染みたはず。」
 紫色に発光するラビスの左手。その手は完全にミオの光魔法を食い止め、1㎜程も侵攻を許す気配が無い。
 その様子を見守りながら、
――ミオ……、アンタの真の力を引き出しなさい。そうしなければ、ラビスは……いえ、ラビスの中に潜む、真の脅威は倒せないわ。そう…アンタが言う通り、『この地上界』は、アンタが守らなければならないのよ!― シグーネは、そう呟いていた。

 そんな中、ミオの光魔法を、左手一本で少しずつ押し返し始めるラビス。
「やはり、その程度か……? まったくもって話しにならぬ。ならば、そろそろこのダーク・デストロイヤーを、この地に放たせてもらうとするぞ!」
 ラビスはそう嘲笑うと、もう片方の右腕で支えていた巨大な球体を、ゆっくりと都心部の方へと向け始めた。
「や……やらせない~っ! おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」
 まるで地響きでも起こっているのではないかと錯覚するほどの、激しいミオの叫び!
 その叫びに同調するかのように、ミオの全身が眩い光で覆いつくされていく。
 そして、魔法を放っていた開いた掌を少しずつ握りしめ、人差し指一本だけをラビスへ向けた!
 そう、それによって今まで広範囲に放たれていた光の束が、指先程細く……しかし更に光を増し、集約された『一筋の閃光』と化したのだ!
「くらえぇぇぇっ! ホーリー・レイ!!」
 指先程の眩い光の直線が、再びラビスを襲う。
「お前の魔力レベルでは、ワラワに勝てぬわ!!」
 そう、余裕で受け止めるラビス。
 だが、今度は先程までとは勝手が違った。魔力を指先に集約したこともあって、力の密度が違っているのだ!
 一本の閃光は、受け止めるラビスの左手に風穴を開けるが如く、キリキリと食い込んでいく。
「ま……まさか!? ワラワが押されるのか!?」
 そう呟いた瞬間、ラビスの身体が眩い白い光に覆いつくされた。
 そう。威力に押された左手を弾いて、白い閃光は、ついにラビスの左胸を貫いたのだ!!

ターディグラダ・ガール 第五話12

「うぉぉぉぉぉぉっ!!?」
 衝撃で、勢いよく弾き飛ばされるラビス。
 同時に空中に漂っていた巨大な球体は、まるで花火のように四散し、消滅していった。
「やったぁぁぁ!! ミオちゃん!」
「ラ……ラビス様……!?」
 躍りまわるセイナに、茫然と立ち尽くすプウーペ。ミオは、そんな対照的な二人の姿を見て、自分の魔法が打ち勝ったことを、やっと悟ることができた。
「大したものだ。さすがはウィンディーの娘……」
 弱弱しい声が、ミオの耳に入る。
 見ると、そこには必死で起き上がろうとする、傷ついたラビスの姿。更にその全身は、白い光の粒子が満遍なく包み込んでいる。
「ラビス様、まさか……それはァ!?」
 プウーペの目に忘れようとも忘れられない、二百三十年前の恐怖が蘇る。それは、ラビスがウィンディーに敗れたときと同じ光景。
 闇属性を操る者が光属性に敗れたとき、全身が光の粒子に覆われ、やがて石箱と化し、身も魂も封印されてしまう。
「か、神楽ミオ……! お願いデス! ラビス様の……ラビス様の光の術を解いてくだサイ!」
 元々…一体の人形であったプウーペは、感情表現というものがあまり得意ではない。にも拘わらず、この時ばかりは目に大粒の涙を溜め、ミオにしがみ付いて懇願してきた。
「う、うん……今すぐ……」
 ミオは両手を広げ、ラビスを包み込んでいる光の粒子を自身の身に、取り込もうとする。だが、そのとき……。
「神楽ミオ、その必要はない……」
 光に包まれ、徐々にその姿が消えかかっているラビスが、そう答えたのだ。
「ラビス様、そんなわけには……!」
「これで良いのだ、プウーペ。お前には黙っておったが、ワラワの中には表に出してはならぬ、もう一人の脅威が住みついておる。このまま一緒に封じ込めてしまう方が最善なのだ。」
「何を仰っているのカ、意味がわかりまセン! それに……帰ってカラオケを熱唱するのでショウ? どうせ私をマイクか…何かに変化させて、遊ぶつもりだったのでショウ? だったら、元に戻って……」
「マイクに変化か……? それはそれで、面白そうだな。考えてもおらんかったぞ! でも、もう……良い!」
 ラビスはそう言って、優しく微笑んだ。
「ラビスさん。貴女……もしかしてワザと挑発して、ボクを奮起させた……!?」
 その問いに、ラビスは何も言わず微笑みで返す。
「血は通っていなくとも、ウィンディーはワラワにとって実の妹のような存在であった。その娘であるお前は、姪のような存在でもあるわけだな。」
 それはまるで、娘に対する母親のような優しい笑顔。
「良いか……? 光の天女、神楽ミオ。
 この時代……この地上。お前の光の力で照らし続けるのだ……。決して闇に……。いや、たとえ……相手が神と名乗っても、負けぬようにな!」
 ここまで言うとラビスは、光の粒子に飲み込まれるように姿を消していった。
 そして、それと引き換えのように、その場所には小さな石の箱が、ポツンと残っていた。

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≫ EDIT

ターディグラダ・ガール 第五話「誰も見ることのできなかった戦い」 三章

「あら…あら~っ! ラビス様、負けちゃったわねぇ~。」
 そんなミオとラビスの決着を、少し離れた場所から眺めていたる一人の若い女性がいた。
「まぁ、アタシも黒祥紫亜(シア)に負けちゃったから、大きな事……言えないんだけどぉ~。」
 その…のんびりと間延びした口調の主は、ラビスの部下であり、ロボット工学の超天才とも呼ばれた元女子大生……茶和レイカであった。
「どっちにしろぉ、これでラビス様の組織も崩壊~っ。以前やらかした……生体実験のせいで大学にも戻れないしぃ、明日からまた、一人で研究できるようにしていかなきゃ、いけないわねぇ~っ。」
 肩を落とし、大きく溜息をついたレイカは、そう言ってその場から踵を返そうとした。
 すると……。
「あいにくだが、一人きりというわけでは無い……」
 低く重い声が、身体の内側から響くように耳に入ってきた。
「あら? なにかしら……今の声は?」 
 辺りを見渡すレイカ。だが、ラビスたちの戦いを見物に来た人々が疎らに集まってはいるものの、今の声を発したと思われる者の姿は見当たらない。
「う~ん……。気のせいだったのかしら~ぁ?」
 そう思い直し、再び歩を進めようとすると、
「いいえ、気のせいではございませんわ!」
 今度は、やや高めでハッキリとした口調の声が、背後から間違いなく聞こえてきた。
 振り返り、声の主を確認するレイカ。
 そこに立っていたのは、年の頃……30歳代前半に見える女性で、まるで柳の木のようにスラリとした細めの長身。短い髪で青白い……肌。いや、正確には淡藤色の肌というべきなのだろうか。鋭く尖った耳に、輝くような赤い瞳。それはあたかも人間のようで、人間ではなさそうな。そんな謎めいた雰囲気を放っている女性であった。
 その女性はその場に跪くと、
「これから先の貴女様には、このアタクシと、そして……偉大なあの御方が、常に一緒におられますわ。」と話掛けてきた。
「貴女と偉大なぁ……? なんだかよく解かんないけどぉ、そう言う貴女は誰かしらぁ~っ?」
「申し遅れました。アタクシの名は『ミンスー』。ラビス様に……いえ、もう隠す必要もありませんね。『マアラ様』に陰ながらお仕えしていた魔族でございます。」
「マアラ……様?」
「はい! 今、貴女の体内にいらっしゃる偉大な御方です!」
「えぇぇ――っつ!? アタシの体内にぃ~っ!? いつからぁ?」
「つい先程……。ラビスが神楽ミオの術によって、封印される直前です!」
 ミンスーのその言葉にレイカは口を止め、静かにその時の様子を思い浮かべてみる。
「どうです? 思い出されましたか?」
「そう言えばぁ、ラビス様が石の箱になる寸前……。なんか黒い影が、アタシに向かって……飛んで来たようなぁ、そんな気はしたけどぉ~っ。」
「その黒い影が、マアラ様です! それまでラビスにとり憑いていたマアラ様が、貴女様の身体に乗り移ったのです!」
「ふ~ん……。それでぇ、そのマアラ様って……何なのぉ~っ?」
「一言で言えば、マアラ様は一人の魔族……。いえ、今現在は、その魔族の魂と言うべきでしょうか?」
「魔族の……魂?」
「はい。魔界におられた頃のマアラ様は、大変気高く向上心の強い御方。そして、その魔力は、魔界の四大実力者をも追い越しているとも言われておりました。遥か昔、ワタクシもそのお力を魔界で拝見したことがございましたが、今思い出しても背筋が寒くなるほどの強さでした。」
「へぇ~っ!」
「それだけの実力と向上心を持っているマアラ様を、四大実力者は危惧しておりました。そこで、魔界総がかりでマアラ様を拘束して、その肉体と魂を切り離し……、魂だけを地上界に追放したのです!」
「ふ~ん、映画みたいで面白いけど……ある意味、迷惑な話ねぇ~っ♪」
「地上界に追放されたマアラ様の魂は、時代を超え……それぞれの時代の魔力の高い人間にとり憑いていました。身体を使わせてもらう代償として、更なる魔力の高みと魔界の知識を分け与える事を条件に。」
「それで、ラビス様に憑いていたわけねぇ~っ! でも……なぜアタシに? アタシは、まるっきり魔力なんて持ち合わせていないわよぉ~!」
「それは、余がそなたの知識と技術を気に入ったからだ……」
 再び低く重い声が、レイカの体内から響き渡る。
「こ……この声は、マアラ様……!?」
 まるで予測していなかったのか? あまりに唐突な主の乱入に、ミンスーは慌てふためいていた。
「あらあら……、やっぱりさっきの声は、そのマアラ様だったのねぇ~♪」
 ミンスーとは対照的に、落ち着いているどころか物珍しげに、表情をほころばせるレイカ。
「ほぅ? そなたは、余が体内に居着いていても、心を乱さぬのだな?」
「ん~~っ……。だって、エイリ○ンみたいに、体内から食い尽くすわけじゃ…ないんでしょ~ぉ? だったら、別に問題ないしぃーっ!」
「やはり、そなたは……余が今まで憑いてきた人間とは、少し違うようだ。ラビスの中から見ていたが、並の人間には無い非情さも持ち合わせているようであったしな。」
「アタシは自分さえ楽しく生きれれば、それでいいのよぉ~っ♪」
「し、しかし……マアラ様。この者に憑いたのは、知識と技術が目的と仰っておりましたが?」
 やや落ち着きを取り戻したのか、ミンスーは別方向に流れた会話を軌道修正し始めた。
「今現在、自分の肉体を持たぬ余が、自身の魔力を制御できる新たな肉体を探しているのは、そなたも存じておるな?」
「は、はい……。しかし人間の身体では、マアラ様の有り余る魔力に持ちこたえることができないため、魔界に残されている本来の肉体を取り戻すと仰っていたことも……。」
「そうだ。人間としては……高い魔力耐性を持っていたラビスですらも、余の本来の力には到底耐えきれそうになかった。そこで余が考えたのは、このレイカの持つ技術で、全く新しい身体を作れないか?ということだ。」
「マアラ様、この者の技術は……機械と呼ばれる無機質の造形。生物のような柔軟性や適応力はありません。お止めになられた方が良いかと……!?」
 マアラと名乗る声の主による、斜め上の発想。そんなことを、まるで予期できぬミンスーは、またしても動揺の色を隠せない。
「レイカよ。お主の技術……それだけでは、あるまい?」
 物静かだが、却ってそれが威圧感を与える。だが、それでもレイカは……
「当然~っ!舐めてもらっては困るわぁ~っ♪ ロボットだけが、アタシの技術じゃないのよぉ~っ。サイボーグ……、すなわち改造生物。または、有機物を使った……新型のバイオ生物でも、アタシの許容範囲なんだからぁ~っ♪」と、まったく動じない態度で返してくる。
「うむ。その技術……余のために使ってみせよ。」
「別に構わないけどぉ、一つだけ聞かせて?」
 そう言うと、にこやかな笑顔にしか見えない独特の糸目が薄っすらと開き、氷のように冷えた瞳孔が、自身の身体を見下ろした。そして……
「魔界では恐れられていたようだけどぉ、あなたの目的は何なのぉ? アタシが力を貸すのは、ソレ……次第ねぇ~っ!」と、問い返したのだ。
――な……なんなのよ、この人間……? 魔力も……戦闘力も無いくせに、なぜ…こんな強気な態度でいられるの……!?―
 レイカの一歩も引かないその態度に、傍から見ているミンスーの方が恐れ多くて、気が気でない。

ターディグラダ・ガール 第五話13

「余が狙うは、全界支配!!」
 先程までよりも、更に低く……重みのある声が、レイカの体内から響き渡った。
「全界……支配…!?」
「そう。魔界、地上界、冥界……、そして天界! 全界全ての支配を創造主から奪い取り、我が手で統べる。それが、余の目的だ!」
「そしたらアタシも、No,1になれるってことかしらぁ~?」
「当然だ。」
 それを聞いたレイカの口から、白い歯が見える。
「いいわぁ~っ! 今のアタシは~、あなたと文字通り一心同体! したがって、あなたの野望はぁ、アタシの野望ぉ~っ! アタシの野望は、あなたの野望ぉ~っ!! アタシの技術は全てぇ、あなたに使わせる~っ♪」
「うむ。代わりに余の魔力も全て、お主の力として使うが良い!」
 そう声が響き渡ると、レイカの身体から黒いオーラが湧き上がり始めた。それは、魔力に精通する者や、霊感を持った者なら嫌でもわかる、強大な闇のオーラ。
 それを見ただけで、ミンスーは恐怖におののき、ガタガタと震え上がっていた。
「そう言うわけでぇ~、ミンスーって言ったかしらぁ? あなた……今からアタシの下僕として働くのよぉ~っ♪」
 もともと温和な顔の作りであるレイカ。今もそう言って、にこやかな笑顔を見せたが、ミンスーにとっては、どんな魔族よりも……恐ろしい表情にしか見えなかった。




 それから約10ヶ月程の月日が経った……ある真夏の日。
 それは、神田川県民にとって、忘れられない大きな災厄の日。
 そして、レイカにとっても野望を前進させる、大きな兆しとなる日であった。
 丘福市を中心に、地震や地割れ。津波に暴風などの嵐。更に、所によっては季節外れの猛吹雪。また、それらによってもたらされた都市の大火災。
 それだけではなく、街には死人を始めとする、魑魅魍魎といった不可思議な生物が闊歩し、人々を襲う。
 それらは全て、原因がまったく不明の大災害であった。人々はこれを『丘福大災害』と呼んだ。


「原因不明……? 愚かな人間共は、蘇った古(いにしえ)の『精霊の支配者』の存在を、まるで気づきもしませんでしたね。」
 丘福大災害の日より更に10日程経ち、やっと人々の心も落ち着きを取り戻し始めた頃、その災害で崩れかけた『丘福市立博物館』で、ミンスーが嘲笑うかのように語りだした。
「まぁ……っ、普通~気づかないと思うわよぉーっ! そんな非科学的な現象。常識に囚われた人たちには、夢にも思わないわよぉ♪」
 そう返すレイカは、館内のあちこちに、実験や研究のための機材を備え付けていた。
「それにしても、さすがは~光の天女…神楽巫緒ねぇーっ! たった一晩で、その精霊の支配者さんを倒してしまうなんてぇ~っ♪」
 レイカは、まるで自分の友人が活躍したかのように、口元を緩ませている。
「ところで……マスター・レイカ。差し支えなければ、空いている部屋を一つお借りしても、よろしいでしょうか?」
 手際よく機材を備えているレイカに向かって、ミンスーは申し訳なさそうに話を切り替えた。
「うん? 別にいいわよぉ~。ちなみに、何に使うのかしらぁ~っ?」
「はい。アタクシのコレクション製作、保管室として使わせていただこうと思っております。」
「コレクション……製作? ああーっ! たしか、生身の女の子のメダル化だったわね~ぇ! いいんじゃな~い!」
「ありがとうございます。では、さっそく女の子たちを部屋に連れて行きます。」
「あらあら! もう、捕獲しているのぉ~?」
「ええ、先程出かけたときに、大学受験予備校の生徒たちを、送迎バス毎……拉致してきたので。」
 ミンスーはそう言って一旦館外へ出ていくと、ほんの数分で、十人前後の女生徒を引き連れ戻ってきた。ちなみに、一緒に乗っていたと思われる2~3人の男子生徒と、中年男性の運転手は、とっくに刺殺しているようだ。
 館内の一階にある、古代生物展示コーナー。割と広めのこの室内に、ミンスーは魔力で檻を作ると、連れてきた女生徒たちをその中に押し込んでいく。だが、
「貴女は、ここに残りなさい。」と、一人だけ手を掴み、その場に残した。
 それは、ストレートロングの髪に、白地にグレーの翁格子柄カチューシャ。小顔でクリクリとした大きな目。襟も真っ白なセーラー服に淡い青色のスカート。
 一言でいうなれば、清楚な女生徒といった雰囲気をもった少女だ。
「貴女、この中では一番気立てが良さそうね。それも今時の女性とにしては、珍しいと言ってもいいくらいの。そこで、まずは貴女からアタクシのコレクションに加えていくとしますわ!」
「コ……コレクション……? あ、あの……、お願いですから、家に帰していただけませんか…?」
 女生徒は、目にいっぱいの涙を溜め、震えながらそう返した。
「悪いけど、帰すわけにはいきませんわ。それより、コレクションにするためには、その品物の情報を細かく知る必要がありますの。
 まずは、アタクシの目をよく見つめてくださいね!」
 ミンスーはそう言って、女生徒の目と鼻の先まで自身の顔を近づける。怯える女生徒は、ミンスーに言われるまでもなく、眼前に迫ったその目を、ジッと見つめる他なかった。
 すると、どうしたことだろう? 
 ミンスーの目を見つめていた女生徒の瞳は、上下左右にゆっくりと動き出すと、やがてぐるぐると回り出していった。
 それだけでなく口端から涎が零れはじめ、まるで全身の力が抜けきったように両手をダランと下げ、上半身は風に煽られる草花のように、ユラユラと揺らめいている。
 それはミンスーの魔術の一つでもある、魅了(チャーム)の魔法。簡単に言えば、催眠術みたいなものだ。
「まずは、貴女のお名前から聞かせてくれる?」
 ミンスーはぐるぐると目を回し、すっかり惚けてしまった女生徒に質問を始めた。
「名前は、一之瀬美桜(みさ)です。」
「一ノ瀬……美桜ちゃん!? 見た目に合った可愛い名前ね。では、美桜ちゃんの年齢や身長体重、学校名から成績、趣味……。すべてを話すのよ!」
「歳は1月生まれの16歳。県立霞ヶ丘高校二年生です。身長は158㎝、体重は42㎏……、音楽が好きで、吹奏楽をやっています。」
 ミンスーの聞かれるままに、自身の情報を次々に話す美桜。その中には他人には決して言いたくないであろうプライベートな内容まで、包み隠さず話していた。
 檻の中から見ている他の女生徒からは、それは異様な光景だったに違いない。
「霞ヶ丘高校……。たしかこの地では、割と学力が高い学校でしたわね。そして、同じ部活の先輩に憧れていて、性体験はおろか……口づけすら未経験ということね!」
 ミンスーはそこまで聞くと、嬉しそうに歯を剥きだして笑った。
「見た目だけでなく、内面まで今時珍しい娘だわ! 貴女、プラチナ(白金)メダル……決定よ!」
 ミンスーはそう言うと、懐から小袋を取り出し、中に入っている白い粉を美桜の全身に振りかけた。
 それは魔界ではよく知られる、『フニャフニャパウダー』と呼ばれる魔法の粉。振りかけられた者は、骨も肉も全て粘土のように柔らかくなってしまう。
 次にミンスーは、二枚の小さなコインのような物を取り出す。それを指先で、ピンッ!と弾き上げると、それは直径40㎝ほどの金属製の盆のような形へと変化した。
 その二枚の盆のような物を、一枚は立っている美桜の足の下に。もう一枚は彼女の頭上で、互いの面が並行になるように移動させる。
「製作開始!」
 ミンスーの合図とともに、美桜の頭上にある盆が、ゆっくりと降下を始める。
 ゆっくり……ゆっくり……降下する盆は、フニャフニャパウダーによって粘土のように柔らかくなった美桜の身体を、ジワジワと圧し潰していく。

ターディグラダ・ガール 第五話14

「きゃぁぁぁぁっ!! やめてぇぇっ!!」
 その悲鳴は、潰されている美桜本人ではなく、檻の中から様子を見つめていた女生徒たちのもの。
 なぜなら、今……彼女たちの眼前では、一人の少女が無残にも圧し潰されている最中なのだ。中には、悲鳴すら上げられず、そのまま失神してしまった女生徒もいる。
 しかし、当の美桜はと言うと……、
「あ、ふにゅ……、気持ち……うにゅ……」
 まるで何を言っているのか解らないが、ただ言えることは、それは苦痛による声ではなく、むしろ快楽に溺れる声と言った感じのものである。
「フニャフニャパウダーには痛覚を麻痺させ、愉悦を感じさせる効果があるのよ。今、美桜ちゃんの心は、天にも昇るようなエクスタシーを感じているはずだわ!」
 そうこう言っているうちに、二枚の盆は重ね合わさる寸前の所まで来ていた。
 そしてついに、ガツッ――ン!!といった衝撃音とともに、二枚の盆は、ピッタリと重ね合わさったのだ!
「あぁ……っ…」
 それを見た半数以上の女生徒たちは、バタバタと気を失って倒れていく。
「さてと、出来栄えはどうかしら~♪」
 ミンスーは重なり合った盆を手に取ると、嬉しそうにそのうちの一枚を、ゆっくりと引き離し始める。
 ベリベリッ!と上側の盆が引き剥がされると、そこにはクルクルと目を回したまま、凸凹の無い……ペッタンコになった美桜の顔が現れる。
 更にもう一枚の盆を引き剥がすと、美桜の顔をした円盤状の物体が手元に残った。
「ウゥ~~ン♪ なかなか、いいメダルになったじゃなぁ~い♪」
 ミンスーの言葉の通り、その円盤状の物体は、真ん丸のメダルとなった美桜そのものであった。
 表側は中心に美桜の顔があり、その周りにセーラー服の襟元やスカートの一部らしきものが、模様のように残っている。そして裏面は、美桜が履いていた……ローファーの底から、紺のハイソックスと肌色の太腿だったものが、円形模様のように残っている。その周りにはスカートの裏地があり、中央にはそれと太腿に挟まれた白地模様が。
 そんな裏面を眺めると、
「あら……この子。今時の子には珍しく、スパッツも短パンも履かないで、そのまま下着を着けていたのね~ぇ♪」
 鼻を近づけ、クンクンとその匂いを嗅ぎだした。
「ハァ~ッ! 鼻にツーンとくる……処女の香り~っ♪」
 まるで茫然自失となったかのように、ミンスーはしばらくの間、その匂いの余韻を不気味な笑みを浮かべながら楽しんでいた。
 そして余韻から立ち直ると、少々名残惜しいように首を傾げていたが、やがて決心したかのように、新たな魔法を美桜に掛け始めた。
 それは、ある種のコーティング魔法。円盤状になった美桜は、端から徐々に、眩い光沢の白色へと変化していく。
「嗚呼ぁ~ン! なんて、素敵なプラチナメダルなのかしらぁ~~っ♪」
 今にも踊りだしそうな勢いで白色の円盤を掲げ、喜びの声を上げるミンスー。
 彼女の言う通り掲げられた白色の円盤は、それは見事な白金(プラチナ)メダルと化した、美桜であった!
 ちなみに、その光景を見つめていた残りの女生徒たちは、明日の我が身と思い知ったのだろう。皆、その場にバタバタと崩れるように倒れていく。中にはスカートの端から、ホカホカの湯気を立ち昇らせている子も、数名いたようだ。


| ターディグラダ・ガール | 21:44 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

ターディグラダ・ガール 第五話「誰も見ることのできなかった戦い」 四章

「この屋敷から、多数の若い娘の匂いがする! 今から全員で突入して、喰らい尽くすぞ! 万一抵抗する者がいえば、全て殺してしまえ!」

 それは、ミンスーが次の女生徒をメダル化する準備に入った頃、やって来た。
 博物館の玄関口を激しく叩き壊す音と共に、ズタズタと地響きのような足音が聞こえる。
「なんですの……、いったい!?」
 ミンスーは口惜しそうに女生徒を檻へ戻すと、足早にエントランス(玄関口)へと向かった。
 そこに待っていたのは、そのものズバリの『黒い集団』!
 数にして、20~30人と言ったところだろう。だが、驚くのは、その誰もが全裸姿であり、そして……その肌は、真っ黒であった。
 獣のような牙を持ったその口は、大きく耳まで裂け、血走った目はギラギラと見開かれている。手足には鋭い刃物のような長い爪が伸びており、それは見た目から人間ではなく、妖怪……もしくは怪物の類だとわかる。
――こいつ等は、中東に住む下等な亜人間……屍食鬼!? ですが、なぜ……この国に?―
 そう。それはミンスーの識別通り、そこに集まっているのは『屍食鬼』と呼ばれる中東の邪精、『グール』という種族。
 屍食鬼の名の通り、主に人間の屍体を喰らう邪精であるが、強靭な肉体と魔力を持っており、時には生きた人間を襲って喰い殺す。
「その屍食鬼が、ここになんの用ですの? たいした用が無ければ、さっさと立ち去りなさい。でなければ、死ぬ思いをいたしますわよ!」
 ミンスーはエントランスで立ち塞がると、全員を見渡しながら脅しにかかる。
「ほぅ!? 御大層な口を叩くヤツが出てきたかと思えば、なるほど……お前、魔族か?」
 そう言って先頭に躍り出て来たのは、一人の女性型グール。正確に言えば、女性型は『グーラ』と呼ばれる。
 そのグーラだが、自身の手で左肩を抑えている。しかし、その左肩には……あるべきはずの『左腕』が無い! それはよく見ると引き千切ったような跡が見受けられ、蒼い血が滴り落ちている。おそらく腕を失ってから、まだそれ程の時間は経っていないのだろう。
 更に、痛みが相当激しいのであろう。眉間には深い皺が入り、額や頬には玉のような汗が浮かんでいた。

ターディグラダ・ガール 第五話15

 それでもグーラは気丈に、
「魔族がこんな所で何をやっているのかは知らんが、この屋敷には多数の人間の娘がいるだろう? お前が抱え込んでいるのか?」とミンスーに向かい合う。
「ええ、たしかにアタクシの元には、10人程の女の子たちがいらっしゃいますが、これはアタクシが集めて来たもの。貴方たちが貫入するべきものではありませんわ!」
「貫入するか、しないかなど……どうでもいい。その娘たちは今からワッチたちが喰らわせていただく。そして、この館もワッチたちの寝床として使わせてもらう。そんなわけで、お前こそ死にたくなければ、さっさと出て行くがいい」
「フンッ!下等な邪精無勢が、何を勝手なことをほざいているのかしら? でかい口を叩くなら、相手を見てから叩きなさいな!」
「お前こそ、状況をよく見てモノを言うんだな! お前の言う下等な邪精でも、これだけの数なら……魔族の一人や二人。ものの数分で始末できるのだぞ! ま、このまま殺してしまった方が手っ取り早いから、ワッチとしてはそちらの方がいいんだが!」
 グーラはそう言うと、不敵な笑みを浮かべる。
――たしかに。いくらアタクシでも、これだけの数の屍食鬼。まともに相手にできる数ではありませんわ。―
 流石にミンスーの表情に、大きな不安の影が浮かんだ。
 それを見抜いたグーラは、部下であるグールたちに合図を送り、ミンスーを取り囲み始める。
 その時・・・。
「あらあら……。随分と騒がしいわねぇ~っ!?」
 エントランスの奥の廊下から、間延びした声とともに、一人の若い女性が現れた。
 それは、言わずと知れた……レイカである。
「に、人間の女……!?」
 虚を突かれたのはグーラである。なにしろ、屍食鬼と魔族との一触即発の空気の中、何喰わぬ顔で、人間の女性が平然と入って来たのだ。それはある意味、魔族の脅しよりも不気味な光景だ。
 レイカは何も言わず辺りを見渡すと、「ああ……、そういうことね!」と全てを察したように頷いた。そして、
「ねぇ、ミンスー。ここにいる屍食鬼の方々……、みんな負傷しているんじゃな~い?」
 と語りかけてきた。
「そ、そうですか……?」
 ミンスーはレイカの言葉で、改めてグールたちを一人一人見直してみる。たしかに言われてみれば、つい先程まで激しい戦闘でも行っていたかのように、全員が身体中に深い傷を負っており、中には呼吸すら満足にできないほどの重傷者も見受けられる。
「だから少しでも体力回復をするためにぃ、食料を要求しているぅ! そう言うことでしょ~っ!?」
 レイカの、やや舌足らずの間延び声が、全てお見通しだと言わんばかりに、グーラに問いかける。
「そ、そういうことだ! 死にたくなければ、この館にいる全ての娘たちを、ワッチ等に今すぐよこすのだ!」
 グーラは、相変わらずレイカの持つ…不可解な雰囲気を読み取れず、若干躊躇しているものの、強気な態度だけは崩さなかった。
「いいわよぉ~♪」
 レイカから返ってきた返事。それは、あまりにも呆気ないものだった。
 その返事に、一瞬呆けてしまうグーラ。
「ミンスー、貴方が集めてきた女の子……、半分くらい分け与えてあげちゃってぇ~~っ♪」
 ミンスーにも予期しない指示が来た!
「ちょ……ちょっと待って下さい! あれはアタクシの大切なメダルコレクションの材料でして……」
 こっちはこっちで、必死になって指示変更を願いだす。
「いいじゃないのぉ~っ! 貴方なら、またすぐに捕まえて来ること……、出来るでしょ~ぉ!? それとも、アタシの言うこと聴きたくないのぉ~っ?」
 いつも通り、笑っているようにしか見えない糸目に、保育園の先生のような……優しそうな口元。だが、その表情を信じてはいけない。ミンスーは、それをよく知っている。
「わ……わかりました。指示に従います……。」
 そう応えて、深々と頭を下げるミンスー。
「そっちの屍食鬼の皆さんも、女の子……少し分けるからぁ~、もうちょっと大人しくしてくれないかしらぁ~っ?」
 レイカはそう言って、グールたちにも温和そうな笑顔を振り撒いた。
 だが……、
「はぁ!? お前……人間の女だよね? 人間の女が、何を偉そうに指図している。ワッチは全ての娘をよこせと言ったんだ。なんだったら、お前から喰ってやってもいいんだぞ!?」
 たかが人間の女。その人間の女なんかに言い包められてたまるか? そう言わんばかりにグーラは、レイカに向かって更に凄んでみせる。
 そんなグーラの態度に、レイカの細い目尻が少しだけ釣り上がる。
「アタシを食べる……? ふ~ん!いいわよぉ~。食べられるなら、いつでも食べてちょ~だい♪」
 レイカはそう言って、カニのように二本指で構えると、「ピース!ピース!」と嘲笑うように、はしゃいで見せた。
「どうやらこの国の人間は、我々の恐ろしさがわかっていないようだ。グーラ様、この俺が……このバカな娘を挽肉にしてやりますよ!」
 たかが、人間の若い娘が何も知らずに粋がりやがって! おそらくそう思ったのだろう。一人の若いグールが、レイカに対して攻撃の了承を得ると、そのまま勇んで飛びかかった。
「ぐわぁぁぁぁっ!!」
 若いグールの鋭く伸びた爪で、レイカの身体は一瞬で真っ二つに切り裂かれる!
 ……はずだったのだが、実は悲鳴を上げたのはレイカではなく、若いグール。
 なんと、その若いグールはレイカを引裂くどころか、指一本触れることができず、その身はまるでビデオの逆再生のように、弧を描いて吹き飛ばされた。
「な……なんなの、今のは……!?」
「あの人間の女……少しも動いていないのに、襲ったアイツが吹き飛ばされたぞ!?」
 驚くグーラと他のグールたち。
 そうなのだ。彼が言う通り、レイカは両手でピースをした姿勢のまま、まるで動いていない。……にも拘わらず、襲い掛かった若いグールは、有無言わさず数メートル先まで吹き飛ばされたのだ。
「何があったの!?」
 その若いグールに駆け寄り、問い詰めるグーラ。
「こ……拳(こぶし)だ!? 無数の拳による、突きや殴打が一斉に襲い掛かってきた……」
 若いグーラは腰を抜かしたまま、恐る恐る返答する。
――拳による攻撃……!? そんなバカな……!? ワッチたちには、そんな攻撃……まるで見えなかったぞ!?―
「そのグールが見たのは、魔気(マーキ)なのよぉ!」
 レイカは、グーラの心の声に返答するように、いきなり話しだした。
「魔気(マーキ)……?」
「そうよ! 闇の魔術を極めた者は、その身に魔気(マーキ)を纏うことができるのぉ~っ! 彼が見たのは、アタシの魔気(マーキ)なのよぉーっ!」
 胸を張り、得意満面に話すレイカ。
――いや、マスター。貴女……どこの世紀末覇王ですか……?―
 ミンスーは空かさず、心の中でツッコミを入れていた。
 …て言うか、お前こそ魔族のくせに、何故……元ネタを知っている!?
「こ、こうなれば……、あの人間を全員で攻撃するんだぁ!!」
 そう叫ぶグーラを先頭に、残り全員のグールたちも、一斉になって…レイカに飛び掛かっていった。
 しかし、当のレイカ本人は、「フッ♪」と軽く鼻で笑うと、
「今夜が雲一つない空だったらぁ~、みんな……死兆星が見えていたわよぉ~♪」
 そう呟き、自身の体に軽く気合を入れた。
 その途端、襲い掛かったグールたちの身体は、一斉に舞い上がる。
 それは、目に見えない風船がパンパンに膨れ上がり、一気に破裂したかのように。いや、そんな生易しいものでは無い。見えない爆弾が爆発したかのように……!
 飛び掛かったグールたちは、レイカを中心に放物線を描いて、十数メートルほど弾き飛ばされていったのだ。
 その衝撃は見た目以上に凄まじく、それだけで気を失うグールもいたほどだ。
「い……今のも、魔気……っていうものか?」
 激しく大地に叩きつけられ、言う事の聞かない身体を必死で起こすと、グーラは震える口でそう漏らした。
「いえ、正直……ここだけの話。魔気と言うのは、マスターの厨二表現です。本当は、拳の攻撃に見える幻覚魔法を使いながら、自身の魔力を『少しだけ解放された』。それだけですわ。」
 グーラの漏らした問いに、ミンスーが少々呆れ顔で返してきた。
――魔力を少し解放しただけ……だと? それでこの威力か!? もし、今のがマトモな攻撃魔法であったら、ワッチたちは全員……瞬殺されていた!?―
 ソレを想像しただけで、グーラの心の中に、恐怖が駆け巡った。
「どうするぅ? まだ、アタシから食べてみよぉ~っ!なんて、思うかしらぁ~?」
 嘲笑うような含み笑いを浮かべ、レイカは再びそう問い掛けた。
「い、いえ……申し訳ありません。勘弁してください……。」
「最初から、そういう風に素直になればいいのよぉ~っ♪」
 レイカはそう言って、ニパッ!と笑うと、
「ミンスー。先程言った通り、あなたの女の子……、分けてあげなさぁ~い!」


 それから数時間後。
 グール達はミンスーが拉致してきた少女たちを、半数ほど食べ尽くすと、見違えるように元気さを取り戻した。
 そもそも人間に比べてたら数倍もの強靭な身体を持つ屍食鬼たち。そのため、体力さえ回復すれば、出血も止まり傷口も塞がりはじめ、回復へと向かっていく。
「でも、この左腕は二度と元には戻らない……」
 グーラの左肩も出血は完全に止まり、その傷跡も塞ぎ始めてはいた。だが、それ以上に失った左腕に対しての、心の傷跡が大きいようである。
 そんなグーラを見ていたレイカ。
「アタシが新しい左腕……、作ってあげよぉーか?」
 そう、何気なく声を掛けた。
「作る……? 左腕を……? そんな事ができるのか?」
 思いがけない話に、身を乗り出すグーラ。
「モッチロぉ~ン! アタシはメカの天才~ぃ!! 最新型戦闘機能付き義手を、2~3日で作ってあげられるわよぉ~っ!」
「最新型…戦闘機能付き……? なんだかよく解らないが、それが本当であれば、ぜひ……お願いしたい!」
「いいわよぉ~ん! た・だ・し……、アタシに忠誠を誓って、アタシの下で働くこと。これが、条件よぉーっ! どぉ~する!?」
 それはグーラにとって、思いの他の展開であった。
 彼女とその手下のグールたちは、災害の張本人である『精霊の支配者』に、本人たちの意思とは関係無く、この国……この丘福市に召喚された。
 精霊の支配者も倒され、本来であれば祖国帰るべきところだが、彼らはこの国の人間の味が気に入って、もう暫くこの地に留まろうと考えていたところであった。
 そんな矢先、この地の人間を守っている『妖魔狩人』と名乗る者と戦う羽目となり、大惨敗を屈したばかりなのだ。
 正直…この国に留まりたいが、次にあの者たちと戦ったら、今度こそ浄化消滅させられてしまうであろう。
 しかし、先程見せつけられた……このレイカという人間の魔力。もし、この人間が自分たちに味方をしてくれれば、間違いなく妖魔狩人を退けることが出来る。いや、奴らの霊力の高い身体を、喰らい尽くすことも可能だ!
「わかった……。い、いえ……わかりました、マスター・レイカ。ワッチとその手下グール全て、貴女様の下で働かせてください!」
 グーラはそう言うと、額を大地に擦り付けるように土下座をした。
「ハ~イ、OKよぉ~ん♪ それじゃ~ぁ、あなた達は今からアタシの部下ということでぇ~っ!」
 レイカはそう言うと、振り向きざまに、
「ミンスー、今日から屍食鬼の皆さんがぁ、アタシの配下に入ったわよぉーっ! そこでぇ……ミンスー、あなたとグーラの二人は、今後同じ幹部として扱うからね~っ♪」
――な……なんですってぇ~~~っ!? アタクシと屍食鬼ごときが同じ幹部、つまり……同じ地位ってことですのーっ!?―
 辛うじて言葉には出さなかったが、あまりに突拍子もない話に、肝が飛び出しそうな程驚いたミンスー。
 そんなミンスーを無視して、レイカは更に話を続ける。
「グーラ。約束だからぁ~、あなたの腕……三日以内に作り上げてあげるわ~っ! あっ、それともう一つ。この国内で活動するには、その姿は目立ち過ぎるわねぇー。人間の姿に変身しておくことぉ! よろしく~っ♪」
 レイカはそう言うと、再び研究室へ戻ろうと踵を返したが、フトッ……足を止め、
「ねぇ? 精霊の支配者さんに召喚されて、神田川県に残ったのはぁ……グーラ達だけぇ?」と聞き返した。
 思いもよらない問いに、グーラは一瞬戸惑ったが、
「あくまでもワッチの推測ですが、この平和な日本という国の人間たちには、ワッチ達……邪霊の存在を殆ど知られていません。それに食文化が発展しているせいか、その肉の味は深みがあって大変美味しい! ですので、ワッチ達以外にも多くの邪精が居残っている可能性は、十分にあります!」と答えた。
「ふ~~ん♪」
 それを聞いて、まるで悪戯っ子のような、無邪気な笑みを浮かべるレイカ。
「グーラ。最初の命令を与えるわぁ! この丘福市付近に居着いた邪精たちをリストアップをして、アタシの元へ連れて来なさぁ~い!」
「マスター、それはもしかして……?」
 傍で二人の話を聞いていたミンスーは、その表情がパァ~ッと明るくなり、思わずそう問い返していた。
「そうよぉ~ん♪ その居着いた邪精たちを兵隊にして、お待ちかねのアタシたちの組織……『パーピーヤス』、ついに活動開始よぉーっ!!」
 サムズアップで、これ以上に無いほどの『ドヤ顔』のレイカ。
「おおっ!!」
 待ち焦がれていた。ミンスーは心からそう思っていた。そしてついに、レイカ(マアラ)の下で、地上界……そして魔界すらも、牛耳ることができるのだ!

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